2011 Fiscal Year Annual Research Report
「政府間和解」と歴史問題に関する基盤的研究―戦争賠償の再検討を中心に―
Project/Area Number |
22243016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
波多野 澄雄 筑波大学, 附属図書館長 (00208521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晋 二松学舎大学, 国際政治経済学部, 教授 (30385968)
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Keywords | 日本政治外交史 / 対日平和条約 / 日中共同声明 / 賠償問題 / 歴史和解 / 歴史問題 / 日韓国交正常化 / 請求権問題 |
Research Abstract |
1.サンフランシスコ講和条約をに点とする「政府間和解」の枠組みとしてのアジア諸国との平和条約・賠償協定の歴史的意義を公開外交文書によって検証した。とくにベトナム賠償、フィリピン賠償など東南アジア諸国との賠償問題の性格と特徴(現地政権の戦争賠償をめぐる正当性、国会における賠償問題の取り上げ方と政府の対応、賠償と経済協力の関係など)について検討し、その成果の概要を研究代表者が一般啓蒙書(『国家と歴史』中央公論新社刊)において発表した。 2.平成23年度に全面公開された日中共同声明に関する外交記録、および既に公開済みの日華平和条約に関する外交記録に基づき、第二次大戦期に形成された国民政府の対日賠償方針はどのように変化したのか、中国共産党政府の対日賠償方針とどのような関係にあるかを検討した。 3.具体的な戦後日本の歴史問題として、戦争と植民地支配の双方に関連する「請求権」について韓国を例に検討した。 4.政府間和解の枠組みとしての「サンフランシスコ講和体制」の安定と限界という観点から、戦後日本の「歴史問題」の一つである慰安婦問題に対する日本政府の対応を検討し、国民基金(アジア女性基金)という方法は講和体制の限界を示すものという仮説を提示した(2012年3月に韓国・啓明大学校における招待講演で発表)。 5.日本政府の歴史政策の一つである日中歴史共同研究(2006年~09年)の意義について、委員の一員としての経験と、共同研究後に中国側参加者との間での議論を踏まえ、早稲田大学における国際会議で共同研究の今後のあり方について報告した。 6.日中間の歴史問題の一つとして細菌戦に関する新資料を入手して、その概要を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジア諸国との平和条約・賠償協定のうち、遅れ気味であった平成22年度までに日韓請求権・経済協力協定に関する日韓双方の外交記録が、また平成23年度には日中共同声明に関する外交記録が全面的に公開されたことで、次年度以降の研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.請求権問題の研究を深めるために、日韓双方で公開された日韓請求権・経済協力協定に関する交渉記録の詳細な分析が必要である。この点は、浅野豊美氏らの連携研究者の協力を得て進める。 2.戦犯の釈放に関する関係資料をサンフランシスコ講和条約(第11条一戦犯条項)との関連で分析し、講和体制の安定という観点から戦争責任問題がどのように行政、司法部門で議論されてきたかを探る必要がある。 3.1990年代のいわゆる戦後補償問題に対する政府の対応を詳細に検討し、政府間和解の変化の意味を考察する必要がある。
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Research Products
(7 results)