2012 Fiscal Year Annual Research Report
「政府間和解」と歴史問題に関する基盤的研究―戦争賠償の再検討を中心に―
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22243016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
波多野 澄雄 筑波大学, 名誉教授 (00208521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 晋 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 教授 (30385968)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 戦争賠償 / 和解 / 東南アジア賠償 / 村山談話 / 講和条約 / 日中共同声明 / 国際情報交換(米国、東アジア) / 慰安婦問題 |
Research Abstract |
1.平成24年度は計画通り、アジア諸国との平和条約・賠償協定・準賠償(とくに、インドネシア、シンガポール血債問題、日タイ円問題)に関する外務省記録ついて、分担者とともに、これらの条約・協定の実施過程、運用をめぐる宥和と反発等の観点から基礎的分析を実施した。なお、日中共同声明についても外務省記録の公開が進捗したため、一部を実施した。 具体的には、研究分担者の佐藤が、上記の東南アジア賠償についてほぼ全ての外交記録の検討を終えた。それに基づき、佐藤は、二国間賠償のあり方が日米関係に与えた影響を含む論文を作成したほか、賠償前史ともいうべき引揚・復員問題について大陸情報の収集という観点から論文を発表した。 2.代表者は、多数国間の和解の枠組みとしての対日平和条約の形成過程の見直しを実施し、その成果を「サンフランシスコ講和体制―その遺産と負債」(波多野編『日本の外交 第2巻 外交史』岩波書店)として公表した。とくに、対日平和条約が、「ヴェルサイユ型講和」から「冷戦型」へと移行する過程において、賠償問題がどのような影響を受けたのかを論じた。 3.平成24年度後半から、1950~60年代に形成された「政府間和解」後の日本政府による和解の試みとそのサスティナビリティを検証した。代表者、すでにこれらの検討を基礎に、その基礎的な検討の一部を含む著作(『国家と歴史―戦後日本の歴史問題』)を発表しているが、さらに政策論としてステップアップするための作業を実施したものである。検討対象は、細川発言と村山談話、教科書問題と「近隣諸国条項」、慰安婦問題とアジア女性基金、歴史共同研究(日韓歴史共同研究、日中歴史共同研究)などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究課題の推進にとって、第二次大戦後の「政府間和解」(対日講和条約とそれを起点とするアジア諸国との賠償協定・平和条約)に関する外務省記録の公開促進がきわめて重要であるが、とくに1950年代について公開が順調に進んでいるため。 2.中国や韓国において第二次大戦後の外交記録の公開が進み、本研究費で雇用している非常勤研究員や研究協力者の積極的な協力によって、東アジア諸国の研究成果や資料がスムーズに得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.最終年度にあたる25年度は、主に以下の課題について東アジア諸国(中韓台)および在米研究者と意見交換を行う。 ①対日平和条約・日韓条約・アジア諸国との平和条約・賠償協定等の交渉プロセスについて、「和解」という観点がどのように組み込まれていたのか、残された課題は何か。②国交正常化問題や賠償問題の解決による「政府間和解」が、歴史問題の決着を意味せず、国内的・国際的にナショナリズムと結びついて様々な形で噴出する過程は、前記課題とどのように関連しているか、「戦後補償問題」との関連はどうか。③和解の「持続」と「制度化」のためには何が必要なのか。④以上の検討を踏まえ、東アジアに適合する公的和解のあり方はどのようなものか。 2.引き続き日中共同声明(公開されれば日中平和友好条約)に関する外交記録の分析を進める。 3.代表者、分担者のほか、主な連携研究者、研究協力者による小規模なワークショップを開催し、論文集または「論点ペーパー」集を編集し、成果物として発表する。
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Research Products
(6 results)