2011 Fiscal Year Annual Research Report
微分方程式論からみた生物のパターン形成―分析から総合へ
Project/Area Number |
22244010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 泉 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40154744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳田 英二 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80174548)
池田 榮雄 富山大学, 理工学研究部, 教授 (60115128)
長澤 壯之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70202223)
小川 卓克 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20224107)
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Keywords | 活性因子ー抑制因子系 / ヒドラ頭部再生実験 / 運動神経軸索配置 |
Research Abstract |
今年度,生物の形態形成の数理モデルと実験結果との比較のため,ヒドラの再生実験(研究支援者・中山まどか担当)とゼブラフィッシュの第一運動神経軸索の位置決定実験(研究支援者・前田美香担当)を行った.ちょうど60年前,Turingが「異なる拡散率をもつ二種類の化学物質が反応するとき空間的に一様な定常状態は不安定化し,パターンが生まれる」という拡散誘導不安定化により生物の発生現象が説明できると提唱し,実例の一つとしてヒドラの触手の生え方を挙げている.40年前GiererとMeinhardtは,活性因子と抑制因子から成る反応拡散系を用いるモデル方程式系を提唱し,ヒドラの頭部再生/移植シミュレーションを行った.近年活性因子や抑制因子に相当する物質の候補が挙げられているが,特定されたわけではない.本研究では,活性因子や抑制因子の拡散係数を推定するために,ヒドラの解離細胞再集合体から形成される頭部の箇数と再集合体の表面積との関係を調べた.これは過去に発表された実験結果を定量的に精密化するもので,特に,複数のヒドラの同一部位から集めた細胞から構成した均一性の高い再集合体を用いてパターン形成における不均一性の役割を調べた.実験からは,不均一性が頭部形成の決定的な役割を果たしていると分かった. ゼブラフィッシュの運動神経軸索が規則的に配置されるように制御する機構を解明するために,体節の長さを変えると軸索の位置がどう変化するかをみた.位置決めに関与していると予想した物質の発現分布を測定したが,体節が長くなると発現がはっきりしなくなり,事態の複雑さが明らかになってきた.また,高木は簡単な数理モデルをたて,シミュレーションを開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発生生物学における形態形成の実験と数理モデルとの比較をする研究であるが,実験に関しては,平成23年3月11日の東日本大地震により設備がしばらく使えなくなってしまったので,平成24年度に繰越して実験を行った.平成24年度内に当初計画で目標としたものはほぼ達成した.基礎的準備が整ってきたため,当初の計画通り数理モデルのシミュレーションを行いながら両者を較べることができる段階に入ったと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドラの頭部再生実験については,生物物理学者の助言を仰ぎながら,定量化をめざす. ゼブラフィッシュの運動神経軸索配置実験に関しては,発生過程のステージの違いで体節の長さが変化することに着目した新しいアイデアに基づいて行う.シミュレーションを本格的に行うため,連携研究者との恊働を推進する.
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