2011 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱分光による超伝導-反強磁性相図と擬ギャップ状態の研究
Project/Area Number |
22244039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 和芳 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (70133923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20303894)
平賀 晴弘 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90323097)
富安 啓輔 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20350481)
佐藤 豊人 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (20455851)
渡辺 孝夫 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (40431431)
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Keywords | 中性子散乱 / 高温超伝導 / 反強磁性 / 擬ギャップ |
Research Abstract |
本研究では、高温超伝導機構の解明と、より高い超伝導転移を示す物質系の探索指針を得るために、銅酸化物超伝導体の超伝導-反強磁性相図の物質依存性を中性子散乱によって研究する。そのための実験手段の一つとして、高性能偏極モノクロメータの作成を行っている。前年度は、大型単結晶を作るための電気炉の改造と、必要とする電気炉周辺の機器の整備を中心に行った。今年度は、これら機器を用いて、定常的にCu2MnAlの大型結晶作成をスタートさせた。育成条件の絞り込みを、電気炉の改善などとともに行い、最終的にはほぼ満足できる育成条件にたどり着いた。しかし口径の大きな結晶内部の情報収集に欠かせない中性子ビームが、東海の研究用原子炉が震災以降停止したままで利用できず、現在運転再開のめどが立たない状態にある。そのため韓国の原子炉HANAROに急遽依頼し、結晶性のチェックを行なった。その結果をもとに、作成プロセスに検討を加え改善を施し、最終的には直径50mm×長さ80mmの単一ドメインの単結晶が育成できた。HANAROでの中性子によるチェックでも、モザイク幅が0.3度と、単結晶としてかなり満足できる段階にまで達している。今後、この育成方法が確立した段階で、熱処理条件の確定を、定常的な熱処理により行う予定である。 偏極モノクロメータの開発と並行して、銅酸化物や、金属磁性体に対する中性子非弾性散乱実験を、J-PARCやJRR-3など国内の中性子施設の再開までの間、海外の中性子施設を利用して行った。その結果、高温超伝導と磁気励起の関係や、これらの特徴的磁気励起と、金属磁性体Mn3SiやCrなどの磁気励起との類似性や相違点が見いだされてきた。 また、相図作成に重要となる、多層系銅酸化物の単結晶育成にも進展が見られており、次年度の中性子散乱実験の可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
単結晶の育成はほぼ定常的に行える状況にあるが、作成した結晶の単結晶度のチェックが、日本の研究用原子炉後者の実験研究は、今年度末にJ-PARCが再稼働し、また外国の中性子施設の利用でによるチェックが出来ないために、迅速にできない。このため、単結晶の熱処理条件がまだ確定しない状況が続いている。さらに偏極モノクロメータ開発と並行して進める予定の、中性子散乱実験が、やはり震災で、J-PARCやJRR-3が利用できないため大きく遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
JRR-3が利用できない状況が継続すれば、結晶性の細かなチェックのためにHANAROの利用を継続し、それに加えて物性研究所のガンマ線回折を利用する予定である。これにより、熱処理条件の探索スピードの向上が期待される。 並行する中性子非弾性散乱実験については、J-PARCが年度末から再稼働を始めたので、できる限り利用する。また海外の中性子施設についても積極的に利用を継続する。
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