2011 Fiscal Year Annual Research Report
ベシクル変形と化学場の結合:生命誕生へのソフトマターからのアプローチ
Project/Area Number |
22244053
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
今井 正幸 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (60251485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦上 直人 山口大学, 大学院・理工学研究科, 講師 (50314795)
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Keywords | ミニマルセル / 3次元形態観察 / 膜弾性エネルギー / 自己生産 / チューブ形成 / 化学刺激 / DNAの自己複製 / 人工細胞 |
Research Abstract |
本研究では、生命を特徴づける最小限度の機能である、自己生産・情報分子の自己複製・膜輸送機能を有するベシクルをミニマルセルと呼び、そのモデル系を再現することにより物質から生命への進化の謎を解き明かそうとするものである。その目的を達成する為、1)ベシクル変形を定量的に理解し、理論モデルを構築する為の3次元形状解析法の確立、2)ミニマルセルモデルを実現する為に、基本的な膜変形の素過程を再現するモデル系の開発、3)実際の生体系では膜変形は化学刺激によって行なわれるので、化学刺激による膜変形機構の解明の3つのプロジェクトに分けて研究を進めて来た。夫々のプロジェクトにおいての研究の進捗状況は以下の通りである。 1)ベシクルが変形していく過程の動的3次元計測に世界で初めて成功し、さらにその3次元像から膜弾性エネルギーを計算するプログラムを開発した。その結果を膜弾性モデルと比較することにより、膜変形機構の解明とくに、ベシクル中での脂質サーバーの存在を明らかにした。Soft Matter投稿中。 2)温度変化により子世代、孫世代のベシクルを生産する自己生産ベシクルのモデル系の開発に成功した。また、サイトーシス現象に特徴的なチューブ形成を再現するモデル系も見出した。PRL2011公表済み。 3)化学刺激による変形機構の解明にフランスのProf. Angelovaのグループと共同で成功した。Soft Matter誌掲載決定。また情報分子の自己複製と連動するベシクルの自己生産系の開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的においた、3次元形態観察法の確立、化学刺激による膜変形機構の解明に関しては、当初の最終目的に近い段階まで2年で達成で来た。さらにベシクルの自己生産、ナノチューブ形成等、当初は実現性が低いと考えていたテーマに関しても実現する事が出来た。さらに国内外のグループとの共同研究により。DNAを複製しながら増殖するモデルベシクル系の機構解明等、化学反応を伴う膜変形系の研究も当初は予想もしなかった展開ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発に成功したベシクルの自己生産系において、化学反応による分子供給系の有無による自己生産機構の違い等、化学反応をともなう膜変形系に特有な現象を洗い出し、分子集合体系における特徴的な非平衡現象の解明を行う。その為には、現在特異的に観察されている現象の普遍化を行いたい。特に、DNAの自己複製と連動するベシクルの自己増殖におけるDNAタイプの違いによる分裂機構、分裂速度の違いが見出されており、これらを系統的に調べていく。また、化学刺激による膜変形についても、様々な化学種により誘起される膜変形の違いを明らかにし、分子の化学刺激に対する感受性を系統的に明らかにしたい。 さらに、膜輸送経路と連動したベシクル内化学反応系を実現し、モデル代謝系の構築にも挑戦し、これらの結果を基に、物質が生命系へと進化したプロセスを追求する。
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Research Products
(13 results)