2011 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解蛍光測定によるタンパク質内部運動と協奏する水和構造変化の解析
Project/Area Number |
22244054
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中迫 雅由 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30227764)
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Keywords | タンパク質 / 水和構造 / 和周波分光 / X線小角散乱 / 溶媒応答関数 / 分子動力学計算 / 低温X線結晶構造解析 / 蛍光発光 |
Research Abstract |
本研究課題では、タンパク質のトリプトファンに由来する蛍光をフェムト秒レーザー和周波分光によって測定し、表面に露出したトリプトファン周辺での水和構造ダイナミクスを解析する測定システムを構築して、タンパク質水和ダイナミクスのより深い研究を行う。平成23年度には以下の課題を掲げて研究を遂行した。 前年度に構築したタンパク質表面のトリプトファン蛍光を測定可能な時間分解測定システムを高度化するため、分光器を搭載して簡便に移動可能なステージを製作した。このステージは、分光器スリットが鉛直方向に開いているため、和周波光を捉えるために是非とも必要であった。高度化を行いつつ、標準色素溶液試料によって装置全体の評価を開始したが、グルタミン酸脱水素酵素野生型と同様に照射損傷が明らかとなってきたため、励起光側の光路、参照光側の光路の両方に、各4枚の反射率30%程度の反射鏡の組みと、迷光防止用ディフューザーから構成された減衰装置を設置して測定を行っている。 前年度に作出したグルタミン酸脱水素酵素遺伝子置換体Trp89Phe,Trp89Ala,Trp92Phe,Trp92AlaのX線小角散乱実験から散乱プロファイルを得、慣性半径や分子最大長、分子形状を得た。Trp89Phe,Trp89Ala,Trp92Pheについては、結晶化に成功し、SPring-8のBL26B2にて低温回折強度データ収集を実施した。データの統計精度は良好で、高分解能での結晶学的構造精密化で得られた電子密度から、変異導入を確認した。酵素活性測定により、変異が同酵素の活性に大きな影響を及ぼさないことも確認したまた、分子動力学計算において、Trp溶媒接触を評価し、蛍光時間変化を説明する水和ダイナミクスモデルの検討するための基本計算コードを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定系では、分光装置の位置変更して測定を容易に可能な時間分解蛍光測定システムを高度化が完了し、また、照射損傷を回避するための反射光学系を設置した。試料については、グルタミン酸脱水素酵素変異体Trp89Phe,Trp89Ala,Trp92Phe,Trp92AlaのX線小角散乱実験、Trp89Phe,Trp89Ala,Trp92PheのX線結晶構造解析を実施した。結晶構造では、電子密度で変異を確認した。また、分子動力学計算の解析に必要なコードを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度から、分光測定を本格的に実施しながら、結晶構造に基づいた分子動力学計算、X線小角散乱から予想される分子運動についてより深い知見を得る。分光測定が順調に進捗すれば、分子動力学計算から溶媒応答関数を導く方法を検討したい。
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