2012 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解蛍光測定によるタンパク質内部運動と協奏する水和構造変化の解析
Project/Area Number |
22244054
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中迫 雅由 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30227764)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質水和 / 水素結合 / 時間分解蛍光測定 / 非線形光学 / 和周波 / X線結晶構造解析 / X線小角度散乱 / 分子動力学シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は、タンパク質が水中で作動する際の水和構造の役割や影響を理解するため、2つの機能ドメインで形成されたタンパク質に着目して、そのドメイン運動とドメインに挟まれた領域の水和構造が協奏的に再構成するというシナリオを検証する。そのために、ドメイン間領域に存在するトリプトファン周辺での水和水集団運動を、ピコ秒時間分解和周波蛍光測定法によって観測するとともに、結晶構造解析に基づいた分子動力学シミュレーションによって得られる実験データの理解を促す。 これまでに構築した時間分解蛍光測定システムにおいて、レーザー照射による損傷を勘案しながら測定するため、強度減衰ミラーや様々な焦点距離を有する楕円鏡を製作設置して、測定系としての高度化・最適化を実施した。また、グルタミン酸脱水素酵素野生型を参照データとして、それとの比較によってTrp89由来の微弱な信号検出方法の検討を行った。 さらに、野生型1.8Å分解能で明らかにした結晶構造を初期構造モデルとして、水中30万原子で構成された系を作成し、プログラムMARBLEを用いた200ナノ秒の分子動力学計算を実施した。まず、各サブユニットでドメイン運動が頻繁に発生することを確認することができた。また、ドメイン運動について主成分分析を実施したところ、結晶構造解析で観測されたドメイン運動の準安定状態が、分子動力学計算で得られた第一主成分で極めてよく近似できることが明らかとなった。分子動力学計算トラジェクトリーの水分子の振る舞いを描き出すためのアルゴリズムや、溶媒応答関数を計算する方法も検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定対象となるグルタミン酸脱水素酵素の野生型、作出した三種類の変異体(Trp89Ala、Trp89Phe,Trp92Phe)についてシンクロトロン放射光を用いたX線結晶構造解析が完了し、溶液中での立体構造についても知見が得られるX線小角散乱データも取得した。さらに結晶構造モデルを初期構造として大規模な分子動力学計算とその主成分分析などが完了している。蛍光測定装置は、より強度を得るために光学部品を追加して高度化・最適化を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、蛍光測定の高度化と最適化に注力し、目的の微弱な信号を取り出したい。また、分子動力学計算で得られる水分子のトラジェクトリーに注目しながら、測定で得られる溶媒応答関数を再現するための理論モデルの検討も行う。
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