Research Abstract |
本年度は,本研究期間中の2年目計画課題を整理統合の下に実践し,以下に要約される成果が得られた.1.原子内包(@)フラーレンの物性解明に向けて:プラズマパラメータの中で,空のC_<60>への照射窒素イオンエネルギーと同ガス圧力の最適化に加えて,C_<60>粒子の昇華状態をクラスターから個別粒子状にするべくオーブン温度を800℃以上まで上げた結果,空のC_<60>に対するN@C_<60>の合成純度を従来の圧倒的世界最高値を更に0.56%まで引き上げた.これによりナノバイオ応用に向けての物性解明が可能になった.2.内包単層カーボンナノチューブ(SWNT)薄膜の電子物性:n型伝導特性を示したCs@SWNTs-TFTは大気中,純水中,高温下(<400℃)いずれの環境下でも安定であるが実証された.一方,光電子融合物性に関しては,n型Siとp型SWNT薄膜から成るpn接合は,赤外光領域の新しい光電エネルギー変換素子機能を創出すると共に,C_<60>@SWNTは変換効率を増大させることを実証した. 3.DNA@SWNT/DWNT(二層ナノチューブ)の半導体伝導特性:紫外光電子分光法で仕事関数を測定した結果,グアニン(G)<SWNT<シトシン(C)なる大小関係が判明したので,異なる電気特性を持つ塩基の種類を変えて各々4種の一重螺旋DNA内包SWNT及びDWNTを創製し,それらによるFET特性を測定した.その結果DWNTの場合には,元は両極性伝導であったのがC_<30>DNA@DWNTでは純粋のp型, T_<30>DNA@DWNTはp型優勢の両極性,A_<30>DNA@DWNTはn型優勢の両極性,G_<30>DNA@DWNTは純粋のn型伝導に変化した.更に,紫外可視域の光照射下FET特性を測定した結果,例えばG_<30>DNA@DWNTの場合,その伝達特性がn型を助長する方向に閾値電圧シフトする光誘起電子輸送現象が初めて発見された.4.準ペアフラーレンイオンプラズマの生成と応用:磁気フィルター付き電子ビーム入射方式に新たにアルゴンガスを導入することによって,新奇原子内包C_<60>の効率的イオン化法を開発し,(Li@C_<60>)+-C_<60>^-の準ペアイオンプラズマの生成に成功したので,高次ヘテロ接合内包SWNTの実験を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つには,内包単層カーボンナノチューブを用いたデバイスにおいて,Cs@SWNTs-TFTがn型伝導特性を示しかつ種々の環境下で安定であること,及びC_<60>@SWNTs薄膜が赤外光領域で光電変換機能を発現したこと,二つ目にはDNA@SWNTとDNA@DWNTの半導体特性において,内包されるDNAの塩基の種類によってナノチューブの電気特性をp型,両極性,n型と自在に制御できること,またそれらが光スイッチング機能を発現したことが初めて明らかにされたからである.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので,全般的にはこれまでの成果に基づいて総括的に研究を推進する予定であるが,ナノカーボンバイオトロニクスの基盤確立に極めて有用な新しい着想も導入して研究を展開する. すなわち,これまでは主に気体プラズマと液体プラズマを対象としてきたが,本年度は初年度に生成した気液界面プラズマを積極的に活用することによって,コロイド内包DNAである"Auナノ粒子-DNA複合物質"及びこれを内包した「"Auナノ粒子-DNA複合物質"内包カーボンナノチューブ」の創製と,それらの電気・磁気・光学の基本特性の追究,そしてバイオ分子エレクトロニクス及びナノメデシンへの応用展開の基本課題を検討することを重要視する.
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