2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22245002
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
平田 文男 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (90218785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 紀生 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10390650)
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Keywords | 3D-RISM / グリセリン / アクアポリン / 平均力ポテンシャル / GlpF / リガンド / 分子シミュレーション |
Research Abstract |
3D-RISM理論によるアクアポリンの分子選択性に関する研究 最近、リアルな蛋白質に対する分子認識のような複雑な現象を予測する目的で分子シミュレーションが適用され始めている。そのような例のひとつがグリセリンを透過するアクアポリン(GlpF)である。GlpFチャネル内部のグリセリンの平均力ポテンシャル(PMF)を計算した論文が、最近、PNASに発表された。しかしながら、その結果は実験(経験)とは逆に、GlpFがグリセリンを全く透過しないことを予測している。我々は3D-RISM理論により、GlpFチャネル内部のグリセリンの平均力ポテンシャルを評価した。3D-RISM理論はこれまでに生体分子の分子認識の問題に応用され、多くの成功を収めている理論である。3D-RISM理論の結果ではシミュレーションの結果とは対照的にGlpFチャネル内におけるグリセリンのPMFには小さなバリアしか存在しないことがわかった。これはGlpFが実際にグリセリンを透過することを示している。そこで、本研究では分子シミュレーションが、何故、このような複雑な系に関する自由エネルギーを正しく評価できないかについての考察も行ない、不十分なサンプリングが高いPMFの原因ではないかと考察した。一方で、3D-RISM理論の結果はリガンド分子の配向も含む全配置空間をサンプルしたものに相当するため、適切なPMFを算出できたと考えられる。 今回の結果は、今後、分子シミュレーションが実験結果の「解釈」ではなく、「予測」を行なう上で、何が必要かを端的に示唆するものである。[J-Phys.Chem.,B,114.7967(2010)に既報]
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