2010 Fiscal Year Annual Research Report
超高強度高靭性次世代型金属系ナノ組織構造材料の開発とその変形強化機構の研究
Project/Area Number |
22246015
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10156862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 仁夫 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70435460)
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
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Keywords | 金属ガラス / ナノ結晶合金 / アモルファス合金 / 引張塑性変形 / 加工硬化 / 靭性 / 熱的構造安定性 / フラクトグラフィ |
Research Abstract |
バルク金属ガラスの引張塑性変形は約0.02秒程度で終了するため、高速度ビデオカメラで引張破壊過程を観察したところ、金属ガラスの塑性変形は一つの貫通したせん断帯(主せん断帯)が連続的にすべり、せん断帯の厚さを15nmと仮定した場合、粘性値は過冷却液体で測定されている値とほぼ一致した(以下の11.研究発表[雑誌論文の一つ目])。すなわち、せん断帯のすべりは過冷却液体を介して起こっていると見られた。そこで、引張試験を粘性値が上がる低温下133K(-140℃)で実施したところ、10%を大幅に超える大きな塑性変形を生じた。試験片表面では常温中と比べて、多くのせん断帯と、さらには複数の主せん断帯が観察された。しかし、依然として加工軟化を示した。 次にナノ結晶合金の引張破断面をSEM観察した結果、破面はマクロにはしぼれていたが、ミクロにも数百nmの大きさのディンプルからなり、典型的な延性破壊を示した。ただし、ディンプルの底には核となる介在物等は見られず、従来の結晶合金のディンプル形成機構とは異なり、完全結晶であるナノ結晶内ですべるのではなく、Niの多い網目状をなすナノ結晶粒の境界が関与してすべりが生じ、このようなディンプルが形成されていることも考えられた。ディンプルの大きさは試験片の表面で観察されるNiの多い網目状組織の大きさと概略対応するが、試験片内部ではNiの多い網目状組織は膜厚方向に細長く、ディンプル形状と対応しない。また、ディンプルが生成されるためにはより小刻みに滑ることが必要である。そこで、超高分解能SEM(日立SU8000)により、ディンプル破面を観察したところ、数nm~20nmの粒状物がディンプル内で観察され、これはアモルファス合金では観察されなかったため、ナノ結晶であると見られ、すべりは予想通りその境界で生じているように見られた。なおディンプル形成の核は、ナノ結晶自体であることが考えられた。
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