2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22246018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏正 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40187761)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シボ / 表面計測 / X線CT / 加飾 / テクスチャ合成 |
Research Abstract |
プラスチック部品の表面に凹凸を付けて加飾するシボは,従来,金型表面にエッチング加工によって凹凸を付ける手作業で行われて来たが,様々な問題があった。そこで、シボのデザインから加工までを一貫してコンピュータで行うデジタルシボ技術の開発が求められている。その中でも重要な技術は、皮革などの表面の凹凸をスキャンしてデジタル化する技術である。様々なスキャン方式があるが、精度や計測時間など一長一短あるため、本研究では計測時間に優れたX線CT装置のもつ課題である精度の問題を克服する研究を行っている。また、効率化を行うために、部分的にスキャンしたデータから部品表面全体に合成・展開する方法について研究を行っている。 本研究では、X線マイクロフォーカスCT装置(島津製作所製SMX-90CT、デスクトップ型の装置)を導入し、シボサンプルを計測する手法やノウハウについて蓄積している。高精度化のための手法として、最初に超解像度法を試みたが、元となる画質が悪く、良好な結果を得ることができなかった。原因として、CT特有のアーチファクトが発生し、画質が劣化することがシボ計測で課題となることが分かった。特に、シボサンプルは平板上に形成されているので、どうしてもサンプルのアスペクト比が大きくなり、長手方向にビームハードニングが著しく発生する。これに対応するために、新しい補正方法の開発を行った。これはRadon変換の性質を利用したもので、シボサンプルのような単材質に制限されるものの、効率よく補正をおこなうことができる。また、小面積のシボ凹凸データを入力シボデータとして,大面積のシボデータを合成するシボ合成とについては、これまでに開発した手法を、様々なシボデータに適用し、企業の協力も得て成形品に適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、デジタルシボ設計支援ツールの実現として、次の二つの目標を上げている。 ○シボ計測ツール 革シボを主たる対象として、凹凸の空間周波数を考慮すると数10μm程度の間隔で,また高さも数μmの分解能で計測できることを目標とする。これまでの開発では、画像の品質の問題があり、サンプルによって目標の達成度が異なっている。品質を上げるには、一つにはサンプルの作成方法や計測方法の工夫などが必要であり、それらのノウハウは蓄積されてきている。もう一つは研究の主たる部分であるデータ処理技術にある。最終的には超解像度法によって解像度を上げたいと考えているが、そのためには画像品質を上げる必要があり、サンプルによってはまだ十分とは言えず、更なる技術開発が必要である。 ○シボ合成ツール これまで開発したものによって、シボデータの品質が高ければ、(主観によって評価は多少揺れるが)皮シボでは十分な合成を行うことができると考えている。手法は、CG(Computer Graphics)の分野でテクスチャ合成として研究されているものを拡張して利用している。一方、金型加工では3次元曲面上での合成への要求もあり、この部分については曲率が大きい場合などには本研究の平面上で合成されたデータでは対応できず、今後の課題であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度として、これまでの研究成果をまとめてX線CTによるシボ設計ツールとする。精度的にはまだ満足がいかないものの、基本的な計測と合成は可能なレベルにある。本研究に興味を示す民間企業もあるため、これらと協力して、シボサンプルデータに適用して、本ツールの評価を行う。 また、高精度化においては、当初試みていた超解像度法を再検討する他、さらにシボのCTスキャン画像の品質を上げるために、アーチファクト補正に加えて、再構成のところまで踏み込んでみたい。近年研究が進んでいる統計的逐次的再構成法の適用を試みる。これは、PETなどの放射型のモデルで適用されて成果を上げているもので、近年X線CTのような透過型のモデルにも適用され始めている。 また別の問題として、CT画像からシボをデジタル加工するためには、CT画像から3次元メッシュを生成する必要がある。従来法では一般に、CT画像処理では、2次元の透過像から3次元のボリューム画像を生成して、さらにそのボリューム画像からメッシュを生成している。そこではCT画像の格子単位で三角形要素を生成するために、メッシュの三角形要素の数が膨大になってしまう。そこで、精度を落とさずに、適当な数のメッシュを生成する手法を新たに開発したい。つまり、ボリューム画像の再構成なしで、直接透過像からメッシュを生成するものである。 このように今後の展開につながることにも着手し、更なる研究の展開をはかりたいと考えている。
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