2012 Fiscal Year Annual Research Report
制限ナノ空間における量子・分子流動ダイナミクスの学理構築
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22246022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子流体工学 / マイクロ・ナノデバイス / 制限ナノ空間 / 量子・分子流動ダイナミクス / 表面・界面 |
Research Abstract |
本研究は,制限ナノ空間における溶媒および溶質分子の高次構造,流動性および電気特性の高速・高精度解析を目指し,量子分子流動ダイナミクスに基づく新しい数理体系の構築とその応用技術を探索することを目的としている. 平成24年度は,電解質溶液中の分子流動現象に着目し,その可視化観察と電気計測を実現した.水溶液中に外部電場または圧力勾配を印加することにより,蛍光染色したDNA単分子の流動現象を可視化することに成功した.そのような流動現象を解析するため,電場存在下におけるDNA断片の流動シミュレーションを可能とした.さらには,独自に開発した粗視化モデルによるパターン形成シミュレーションを実現し,グラファイト基板表面に見られるDNAの自己集合化構造について,フラクタル次元解析を用いることで実験と理論の一致を示した.これらの結果から,ナノメートルスケールの狭小流路において,イオンの電気泳動と壁面近傍の電気浸透流の影響が顕著になり複雑な流動場が形成されていることが実験と理論の双方で確かめられた.一方,マイクロメートルサイズの流路においても局所的に電気的中性条件の破れた場を形成させ,イオンの流動現象を可視化することに成功した.このような現象に対して,実験系を再現する初期条件・境界条件の下で,Nernst-Planck方程式とPoisson方程式をセルフコンシステントに解くことにより,複雑な流動場におけるイオン輸送を明らかにすることが可能となることを示した. 本年度の研究成果は,査読付き原著論文5件,国際会議発表5件,国内会議発表12件および特許出願3件として発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において,本年度は,制限ナノ空間におけるバイオナノ流動の電気的計測,人工イオンチャネルの開発,およびイオン輸送モデルの実測による検証を行うことを目標としていたが,上述のように,イオン流動の制御,可視化,および電気計測が実現していることから,いずれの課題もおおむね順調に進展しているといえる. これらの結果について,国内外の学術会議において成果発表を行い,さらに原著論文として出版することができていることから,本課題に基づく独創的な研究成果が着実に蓄積されていることは明らかである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,前年度の研究成果に基づいて,イオン流動に対する人工ゲーティング機構の発現とその計測を行うとともに,ハイブリッドシミュレーションによる流動予測技術の確立を目指す.ここまで3年間の基礎的研究に基づき,それらの応用展開を考慮した研究フェイズに移行する. 具体的に,ナノスケールのデバイス作製および計測については大阪大学産業科学研究所の協力を得ながら人工ゲーティング機構の実現と単分子計測の実現を目指し,マイクロスケールにおけるイオン流動現象については独自に実験系を構築する.これまでの研究成果により,これらのスケールが異なる領域で起こる現象を統一的に扱うための理論モデルを発展的に構築し,数値解析を行うとともに予測技術の開発を目指す. 各研究課題について,計測技術および理論解析においてスケールの異なる現象を複合的に扱うことに対するいくつかの困難が想定されるが,分担者および連携研究者の専門的知識と最先端の技術を結集させることにより具体的解決策を見出すことができ,さらに飛躍した独自の研究成果につながることが期待される.
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Research Products
(28 results)