2013 Fiscal Year Annual Research Report
制限ナノ空間における量子・分子流動ダイナミクスの学理構築
Project/Area Number |
22246022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
花崎 逸雄 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10446734)
辻 徹郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00708670)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子流体工学 / マイクロ・ナノデバイス / 制限ナノ空間 / 量子・分子流動ダイナミクス / 表面・界面 |
Research Abstract |
本研究は,制限ナノ空間における溶媒および溶質分子の高次構造,流動性および電気特性の高速・高精度解析を目指し,量子分子流動ダイナミクスに基づく新しい数理体系の構築とその応用技術を探索することを目的としている. 平成24度までに,制限ナノ空間における分子や微粒子の電気計測および可視化観察を行うための実験環境を整えてきており,具体的な計測結果が得られるようになった.一方で,理論的枠組みについても,分子流体力学の観点から独自の数理モデルを展開し,実測データとの比較を行う準備を進めてきた. 平成25年度は,さらに,電解質溶液中の電場とイオンの濃度場およびそこでの荷電粒子や分子の振る舞いについて調べ,現象の時間空間スケールについて議論することを可能とした.電極に電圧を印加した直後に溶液中には一様電場が印加されるが,それを遮蔽するようにイオンが流動し始める.この事実は,これまでにも知られていることであるが,ナノメートルスケールからミリメートルスケールで見られる現象を同一の理論モデルで扱えることを示した.溶液中における電解質イオンの振る舞いに加え,そのような場を泳動するDNA分子の運動についても考察した.流路中にナノワイヤーのような障害物を配置することにより,そこを通過するDNAは抵抗を受けて速度が低下するとともに,その凝集構造が伸長することを蛍光観察により示した.このことについて,分子動力学シミュレーションによる解析においても同様の傾向が示された.電気泳動する長鎖高分子の速度制御に関して,ナノ構造の障害物や壁面との摩擦または電気浸透流による逆向きの溶媒の流れを利用することが提案されているが,このような未知の分野に関してもこれまでの成果に基づき引き続き研究を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の中で,本年度は,電解質溶液中で局所的に電気的中性条件の破れた場における非定常イオン流動問題を扱うことを課題の一つとしていた.この点について,いくつかの系に関して実験と理論の両面からアプローチすることができている.ナノ流路デバイスにおけるイオン流動現象を明らかにするために,電解質溶液中の微小電流を計測し,その過渡応答から現象の時空間スケールを明らかにすることが可能となった.ナノアンペアオーダの電流信号には,溶液中における電解質イオンの流動に関する情報が多分に含まれており,電極表面を遮蔽しながら拡散と電気泳動により移動するイオンの振る舞いが理論的に説明された.本成果は,溶液中におけるイオン流動をさらに詳細に議論することを可能とするとともに,デバイスを最適化するための設計指針を与えることにつながるものである.また,電極表面と帯電した分子の相互作用により吸着する分子の振る舞いを調べた.グラファイト表面で帯電したDNAが自己集合化する過程を原子間力顕微鏡により観察し,吸着・脱離と拡散による構造緩和過程を分子動力学シミュレーションと反応拡散モデルにより解析した.その結果,静電相互作用による瞬時の吸着が起こった後に拡散により系が緩和することが示された.以上のことより,電解質溶液を含む様々な系に見られるイオンや電荷を帯びた分子の応答に関して,同様のメカニズムで現象が説明されることを見出した.さらに,細孔を通過する電気浸透流を観察するための実験系を構築し,予備実験の段階ではあるが,その可視化に成功している.引き続き,本実験を行うことにより,その詳細が明らかにされると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,制限ナノ空間における非定常イオン流動現象の計測と理論モデルによる理解が進められてきており,学術的深化が推進されている.本年度は,研究計画の最終年度に当たることから,これまでの成果の集大成を図るとともに,残る課題を明確化し,引き続き研究の方向性を示す.また,研究成果については積極的に原著論文として出版し,国内外の専門会議にて発表することはもちろんのこと,さらに,その技術を発展させて社会に還元するため,工学的応用についても重視しながら新奇デバイスの提案を視野に入れた展開を試みる.
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Research Products
(46 results)
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[Journal Article] DNA Manipulation and Separation in Sublithographic-Scale Nanowire Array2013
Author(s)
Takao YASUI, Sakon RAHONG, Koki MOTOYAMA, Takeshi YANAGIDA, Qiong WU, Noritada KAJI, Masaki KANAI, Kentaro DOI, Kazuki NAGASHIMA, Masanobu TOKESHI, Masateru TANIGUCHI, Satoyuki KAWANO, Tomoji KAWAI, and Yoshinobu BABA
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Journal Title
ACS Nano
Volume: 7
Pages: 3029-3035
DOI
Peer Reviewed
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