2011 Fiscal Year Annual Research Report
微生物の生態を利用したサステイナブルな下水処理技術の開発と統合的モデル化
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22246069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
味埜 俊 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60166098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (90251347)
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Keywords | 有機物一時貯蔵 / 下水処理 / 活性汚泥法 / 省エネルギー / 高速シークエンシング / 微生物群集構造 / 生物学的リン除去 / 栄養塩循環 |
Research Abstract |
本研究は微生物の持つ有機物一時貯蔵能力を活用しての下水処理におけるエネルギー効率の改善という実用的な側面と、その基礎となる微生物群集の把握とモデル化という基礎的な側面の二つに取り組んでいる。また、震災後、東北地方太平洋岸の多くの下水処理場が機能を停止し、その後も機能回復に非常に時間がかかっている。そのことから、新たな研究課題として、微生物の有機物吸着能力を活用し、下水管内で間欠的に下水を流下させることにより、有機物除去と酸化分解を交互に行う処理方式を考案した。結果、研究の進め方を次のように集約させることとした。すなわち応用の方面として、A)FAREWELプロセス、B)電力消費シフト、C)下水管内処理、また、これらを支える基礎面での検討として、D)微生物群集構造の評価、E)数値モデルの開発、である。 A)については、すなわち余剰活性汚泥に過剰の有機物を蓄積させる反応(FAREWEL反応)を行った後、貯蔵された有機物の安定性について検討した。その結果、25℃~30℃の間では数日程度汚泥を貯蔵しても安定であることがわかった。B)についてはサイクル/日で運転する実験室回分式活性汚泥プロセスについて、1サイクル/日を好気時間を半減させても、少なくとも有機物除去には悪影響はないことを確認した。さらに、好気時間を90%まで減少させても影響は小さかった。C)については塩ビチューブを用いて試行的な実験を行ったが、良好な結果は得られなかった。D)については高速シークエンシング法により微生物群集構造を解析した結果を可視化するソフトウェア環境OTUMAMiを開発し、インターネット上に公開した。また、汚泥の脱水性と細菌群集の関連、処理水に出現する微生物群集、微量元素が群集構造に及ぼす影響について検討した。E)については物質収支に基づいて考え方を整理する方法を環境工学研究フォーラム等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災による下水処理場の被災を受けて、微生物の持つ有機物一時貯蔵能力を活用した新しい下水処理の考え方を、小規模高負荷での下水処理や、エネルギー収支の改善、電力需要逼迫下での電力消費シフト、落差・間欠流を利用しての下水管内処理、という4方面でまとめることができた。また、微生物群集解析環境としてOTUMAMiを開発し、高速シークエンシング法を導入することに成功した。これら大きな成果が得られた一方、震災や下水汚泥への放射性元素の混入といった混乱から、実処理場での実証的な検討に遅れが生じている。予定よりも進んだ面と遅れている面があり、全体としてみると、(2)に区分される程度の成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
活性汚泥による有機物の一時貯蔵現象については、当初はパイロットスケールでの検討を計画していたが、むしろ実処理場に赴いて回分実験を多数こなすことにより、基礎的な成果を積み上げる方向として進めたい。また、下水管内処理についてはさまざまな手法を試みながら進展させる。その他は予定通りに進める。
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