Research Abstract |
本年度は,超高圧電子顕微鏡(JEOL-1300NEF)に高傾斜回転ホルダーを用いて,超高圧電顕を用いたトモグラフ観察環境を最適化した.そのために,試料はこれまで我々に実績のあるシリコン単結晶を用いた.板面が(001)であり,対角線長さが約200nmである酸素析出物を含むシリコン単結晶にノッチを導入し,993Kで曲げ試験を行った.種々の試験温度で曲げ試験を行い脆性一延性遷移(BDT)温度を測定したところ,析出物を含む試料ではBDT温度が低下することが明らかとなった.そこで更に,他の変形速度でBDT温度を測定し,変形速度依存性から活性化エネルギーを測定した.その結果,析出物を含まない試料における活性化エネルギーと変化がないことが明らかになった.このことは,BDT温度の低下は,転位移動度の上昇では無く,転位密度増加によるものであることを示唆している。そこで,ノッチ先端近傍を選択的に薄膜化し電顕試料を作成した.その結果,析出物から析出物サイズと同程度の直径を持つプリズマティック転位ループと,析出物を囲むように存在する直径数ミクロン程度の転位ループがみられた.電子顕微鏡内で試料ホルダーを2゜ずつ約±50゜程度回転させるトモグラフィ観察行った.その結果,この大きな転位ループは同一たり面上にはなく,パンチアウト転位が上昇運動を伴い成長したものであることが明らかとなった.この転位ループを構成するセグメントの一端は上昇運動により生じた不動転位によりピン留めされており,外部剪断応力の下この転位ループが運動し,更にもう一点が他の転位との反応などによりピン留めされると,このセグメントが支柱構造となりフランクリード源として働きうることが明らかとなった
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