2010 Fiscal Year Annual Research Report
白金族金属の複合塩化物の溶解挙動の解明と新規リサイクル技術の開発
Project/Area Number |
22246098
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00280884)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 一樹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00210170)
|
Keywords | 白金族金属 / リサイクル / 湿式プロセス / 乾式プロセス / 活性金属 / 環境調和型プロセス / 資源循環 / レアメタル |
Research Abstract |
我が国は、金属資源のほぼ全量を輸入し、高い付加価値のハイテク製品を製造して輸出することによって、豊かな生活を維持している。このため、環境保全と資源戦略の両方の観点から、白金族金属(PGMs)を効率の良くリサイクルする環境調和型の新技術の開発は極めて重要な課題である。そこで本研究では、有害な廃液を排出しない新しいコンセプトのPGMsのリサイクルプロセスの開発に向けて、PGMsである白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)を対象として、それらの活性金属-白金族金属複合塩化(酸化)物の合成法や反応形態の解析を行った。さらに、塩素系水溶液への溶解挙動を解明することにより、高度循環型社会に不可欠な新しいタイプのリサイクル技術の開発を行った。 CuCl2、FeCl3などの塩化物を用いた塩化処理を行い、粉末X線回折等の分析により生成相を同定し、最適な合金化・塩化処理条件を検討した。その結果、マグネシウム(Mg)蒸気を用いた合金化処理の場合には、Pt、Pd、Rh、Irは全て金属間化合物となる一方で、RuはMgとは金属間化合物を形成しないことが明らかとなった。Ruは他のPGMsとは異なり、Mgとの親和性が小さいために金属間化合物が得られなかったと、熱力学物性データに基づき推察した。より親和性の高い亜鉛(Zn)蒸気を用いれば、金属間化合物を容易に形成することが予想できる。 塩化処理後にPtは70%以上の溶解率で塩水に溶解する一方で、他のPGMsの塩水への溶解率は30%未満にとどまることが明らかとなった。この理由として複合塩化物の生成率に起因すると考えられる。通常、単純な塩化物でも塩水には溶解しないRhやIrの溶解率が塩化処理によって大幅に改善されたことから、複合塩化物の生成が溶解率の促進に起因していることが推察された。環境調和型の新規なPGMsのリサイクルプロセスに向けた平成22年度の研究によって、大きな進展が見られた。
|