Research Abstract |
本研究は,肝・膵島といった代謝組織を対象とし,生体と同オーダーの単位体積当り機能と抗血栓性とを保持する埋込み型組織相当物について,その設計と構築育成を可能とする工学的方法論の確立とその実証を目標とする.平成22年度(平成23年度への繰り越し分の成果を含む)においては,以下の検討を行い,成果を得た. まず,異種細胞からなる組織エレメントの効率的な作成手法の確立を目的として,酸素透過性のポリジメチルシロキサンの表面に3次元のマイクロウェル構造を付与した培養プレートを用意し,底面から直接的に酸素供給を行う手法を用いた.この手法により,ラット肝細胞を撒き,数時間後にヒト麟帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を付加することで,表面が内皮化された組織エレメントを通常の2-5倍の高播種密度にても,1日以内に効率的に形成することに成功した. 次に,三次元造形の解像度では造形不可能なマイクロスケールにおける高密度組織の形成手法の確立を目的として,形成したエレメントを,生分解性のポリ乳酸性不織布から調整した線維と共に小型バイオリアクター(体積0.1cm3)に充填し,灌流培養を行った.線維は,市販のものをアルカリによる加水分解処理・超音波処理・精製することで,長さ100-500マイクロメータの単分散線維とした.10日間の灌流培養で,線維を共に充填したものは線維無の群と比較して,より高い生存率とアルブミン分泌能を示したが,その差異は2倍以内であり,組織学的観察ではどの群でも生存率の低下が顕著であった.従って,代謝能の極めて高い成熟肝細胞を良好かつ長期に機能させるためには,灌流のための流路構造の確保に更なる配慮が必要であるとの結果となった. 灌流培養に適した人工赤血球の開発については,ヘモグロビンを高濃度アルブミンの存在下にてシラスポーラスグラス膜から押し出し,グルタルアルデヒドで架橋することで,安定かつ均一なものを効率的に形成可能であることを確かめた.
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