2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22246108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粟飯原 周二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10373599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉成 仁志 海上技術安全研究所, 生産システム系, 上席研究員 (20167737)
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Keywords | 材料・構造力学 / 破壊力学 / 船体構造 / 脆性破壊 / き裂伝播 / 溶接構造 / 数値モデル |
Research Abstract |
本研究は大型海上輸送体の大規模破壊を防止する設計基準の確立に資するために基盤研究を行うものである。特に、近年大型化が著しいコンテナ船ではこれまで経験のない70mmを超える極厚鋼板が使用されるようになり、このような極厚鋼板を使用した超大型船体における信頼性を確保するために、高速で伝播する脆性き裂の挙動を基礎的に研究する必要がある。H22年度に得られた成果は以下のとおりである。(1)船体用高張力鋼を用いた大型脆性き裂伝播試験を行い、脆性き裂伝播抵抗値(Kca)を計測した結果、負荷応力を高くすると、通常条件で得られるKcaよりも著しく高い値が得られることを実証した。さらに、このような現象が起きる場合には、き裂伝播部の塑性変形量が著しく上昇していることを見出した。(2)き裂の塑性変形を考慮した動的き裂伝播モデルを開発し、き裂伝播挙動に及ぼす負荷応力の影響を計算したところ、上記(1)の実験結果を説明できることを確認した。さらに、このモデルを2m超の広幅試験に適用して計算した結果、き裂駆動力KがKcaより大きくてもき裂が停止する場合があることを確認した。この現象は従来の破壊力学では説明ができず40年来未解決の問題であったが、本モデルによってそれが初めて説明することができた。(3)溶接部の靭性分布と溶接残留応力の3次元的分布を考慮したき裂伝播モデルを開発し、溶接部のき裂伝播挙動解析を行った。溶接熱影響部の靭性の谷間が深く、負荷応力が低いほど脆性き裂は溶接部に沿って伝播しやすくなることを計算により求めた。この計算モデルにより実際の溶接部き裂伝播挙動を説明できることを確認した。 次年度以降、実験と解析の範囲を広げ、上記モデルのより深い検証を行うとともに、脆性き裂伝播停止条件について検討を継続する。
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