2011 Fiscal Year Annual Research Report
共生系における寄生者の多様性と、寄生者が共生系に与える影響
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22247003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 真 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (80204494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川北 篤 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80467399)
吹春 俊光 千葉県立中央博物館, 上席研究員 (50250147)
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Keywords | 絶対送粉共生 / 共生 / 共進化 / コミカンソウ科 / ホソガ科 / 菌従属栄養植物 / 菌根共生 / 寄生者 |
Research Abstract |
コミカンソウ科の絶対送粉共生系において、琉球列島を中心に、さまざまな系統の植物の上で、共生性/寄生性ハナホソガ類とそこに介在するコマユバチ類の多様性を解明すべく、それらの生活史や生態・行動・系統を調査した。また、野外で植物の開花・結実を追跡し、寄生者が植物の繁殖に与える影響の評価を試みた。コマユバチによるホソガへの寄生は、種子の食害率を減らすことによって、間接的に植物の繁殖を助けていることが示された。コミカンソウ科の果実から羽化してくるコマユバチ類にはホソガ寄生性のものと種子寄生性のものがあり、安定同位体の分析をも行ない、それらの生態・分類・系統解析も進みつつある。さらに、コミカンソウ科には、絶対送粉共生性のものとそうでないものがあり、それらの植物の花の匂い分析も進みつつある。また、シマコバンノキも絶対送粉共生であるが、そこには数種のハナホソガが送粉にかかわっており、さらに寄生的なホソガも生息していることが明らかになってきた。 菌従属栄養植物と菌との関係を明らかにするために、ラン科(特にヤツシロラン類)、ヒナノシャクジョウ科、ホンゴウソウ科などを中心に、系統解析や菌根菌の同定、送粉様式の観察を行なった。菌従属栄養植物の中には、菌根菌に共生するものと、落葉腐朽菌に共生するものがあり、その寄主特異性についてのデータが集まりつつある。ラン科の中には、近縁種間で無葉緑のものから緑葉を持つものまで、光合成能力に種間差が見られるグループがあるが、それらの間で植物-菌関係(菌根を形成する菌の種構成、菌の種特異性、植物の光合成能、有機物のフロー)に関するデータが集まった。菌従属栄養のヤツシロラン類は、クヌギタケ類に栄養を依存するだけでなく、クヌギタケ類を餌とするショウジョウバエ類によって送粉されていることが明らかとなり、菌根菌と送粉者が複雑に関連し合っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウラジロカンコノキで遅延結実をする個体が発見され、その個体の種子では、種子寄生性のホソガ幼虫が成長できないことが明らかになった。このことは、植物が遅延結実によって、送粉者の種子食害のコストを減らしていることを示唆している。菌従属栄養植物数種において、寄生菌類や送粉者の特定が行なわれ、それらの生物が錯綜しあう興味深いさまざまな事実が見つかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
コミカンソウ科植物の果実から羽化してくるコマユバチ類の生活様式を明らかにする必要があるため、大規模な飼育実験、産卵行動の観察、安定同位体解析などを行なう。また、コマユバチ類の分類と系統解析についても、たくさんの標本を用いて行なう予定である。菌従属栄養植物に関しては、関係を持っている菌類の同定と、送粉様式の観察を、さらにいっそう進める。
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Research Products
(10 results)