2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22247038
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
曽根 良昭 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60145802)
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Keywords | 遊離脂肪酸 / ウエストヒップ比 / 日本食 |
Research Abstract |
本研究の目的である食のグローバリゼーションがある民族の健康に及ぼす影響をポーランド人被験者に日本食と通常のポーランド食を長期間摂取させた時の被験者の生理的パラメータ(体組成、血液成分など)に与える影響について検討した。 20-25歳の健康な女子学生35名をランダムに実験群23名とコントロール群12名にわけ実験は6週間に渡って行った。実験群は朝食、昼食、軽食、夕食の4食のうち、昼食と夕食には伝統的な日本食に基づいたメニューを摂食し、コントロール群は全食典型的なポーランドの食事を摂取した。両群とも1日の摂取カロリーは2000 kcal だが、主要栄養素はそれぞれ異なり、炭水化物、脂質、タンパク質が1日のエネルギー量に占める割合は、実験群ではそれぞれ53.2%、28.2%、18.5%であり、コントロール群では49.9%、34.9%、15.2% であった。 その結果、総コレステロール、HDL コレステロールレベルは両群で有意に低下し、遊離脂肪酸は実験群で有意に増加した。また実験期間中のインスリンレベルの低下率は、実験群に比べコントロール群で有意に高かった。ウェストヒップ比、収縮期・拡張期血圧、中性脂肪レベルの中央値の変化力に関して、実験群とコントロール群で主に差がみられた。それらの中央値は実験群で有意に低下した。体脂肪と遊離脂肪酸レベルの変化率の変化の仕方はグループ間で異なり、実験群で体脂肪の有意な低下と遊離脂肪酸の有意な増加がみられた。コントロール群では実験群に比べインスリンレベルが有意に大きく低下した。インスリンレベルを除くほとんどの事実 から、伝統的なポーランドの食事計画に比べ日本食に基づいた食事計画のほうが、今回実験を行った女子学生群の栄養状態に対し、若干好ましい影響を与えることが示唆された。しかしながら、他のパラメータを含むさらなる分析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である食のグローバリゼーションー食生活の世界的一般化ーがそれぞれの民族にどのような影響を与えるかを生理的な計測を行い、検証する中で、平成23年度、研究実績の概要にも記載したがポーランドにおいて日本食、ポーランド食を6週間にわたって摂取する検証を行った。 その結果、日本食はポーランド人に対してポーランド食より若干、生理的に”良い”(いわゆる西欧食に比べれば)結果を与えたが、全体的に”大きな”影響を与えたとはならなかった。 また、同時に行った日本とポーランドに於ける食生活の調査から、日本、ポーランドともに伝統的食生活から、いわゆる”西欧的”食生活への変化ー食のグローバリゼーションの進展が確認された。 実績のところでも述べたように、平成23年度に行った実験の結果を更に詳細に検討を行わなくてはならないが、少なくとも、低脂質-高炭水化物の日本色は、食のグローバリゼーションに関して言えば他の民族の(生理的)健康にはあまり大きな影響を与えないことが分かり、本研究の目的である食のグローバリゼーションの生理人類学的検証はおおむね順調に進展している ーと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行ったポーランド人に対する日本食の摂取実験では実績の欄に書いたように”大きな生理的”影響を与えることはなかった(詳細は現在解析・検討中)。そこで今後の計画として、摂取実験をおこなったポーランド・ポズナン地方での高齢者と中年者を対象に食生活と種々の生理的・人類学的パラメータを測定して、ポーランドの国内おいて高齢者が経験した食生活の変化(急速な東欧的・伝統的食生活から西洋的食生活への)が与えた・与えている全身的影響を調査することにより食のグローバリゼーションが人々に与える影響を生理人類学的に検証・推進する予定である。
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