2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗原提示バキュロウイルスを用いた原虫感染症治療用ワクチン開発基盤技術の構築
Project/Area Number |
22248009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
朴 龍洙 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90238246)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カイコ / ワクチン / 抗原提示 / バキュロウイルス / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
本年度は、免疫賦活活性を有するバキュロウイルス上にN. caninum抗原タンパク質を提示することにより免疫賦活剤を添加しないより効果的なワクチン候補として抗原タンパク質(NcSAG1、NcSRS2、NcMIC3)をBombyx mori核多角体病ウイルス(BmNPV)の表面に提示した。これをカイコ幼虫で組換え抗原タンパク質を提示したウイルスの生産を行った。組換え抗原タンパク質の発現はウェスタンブロットにより確認し、N. caninum陽性ウシ血清に対して抗原性の有無をELISA法で調べた。ウイルスの形状は透過型電子顕微鏡で形状を調べた。また、抗原を提示したバキュロウイルスをBALB/cマウスに注射することで免疫化を行い、抗原特異的抗体の生産について調査した。 原虫の表面抗原タンパク質であるNcSAG1、NcSRS2、宿主細胞への感染の際に分泌されるタンパク質であるNcMIC3において抗原性を確認した。バキュロウイルス上への3種類の抗原タンパク質の提示はELISAによって確認し、提示量はバキュロウイルス1×108 pfuあたり最大48.6 ngであった。抗原タンパク質提示ウイルスを用いたマウスの免疫化では、抗原タンパク質とフロイント不完全アジュバントによる免疫化のマウスと比較してIgG1の生産比率が低く、IgG2aの生産比率が高いことが示された。このことから抗原タンパク質提示ウイルスを用いた場合、IgG2aの生産比率が高くなる1型のヘルパーT細胞が関与する(Th1型)細胞性免疫が優位になっていることが示唆された。この成果は、原虫感染を防御するためにはTh1型の免疫が効果的であるため、本研究で得られた抗原タンパク質提示バキュロウイルスは原虫感染に対して有効なワクチン候補となることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度研究計画は、ワクシニアウイルス表面タンパク質のバキュロウイルス表面への提示とマウス細胞で遺伝子発現の可能なプロモータースクリーニングとなっている。平成24年度には3種類の抗原タンパク質をバキュロウイルス表面に提示させ、免疫原性などを調べた。また、マウス細胞で遺伝子発現の可能なプロモータースクリーニングについては、既にプロモーターや発現系の選定は修了しており、発現ベクタに抗原タンパク質の遺伝子を導入済みで有る。 当初の計画ではワクチンの評価を最終年に予定していたが、昨年からワクチン開発と同時に評価を行っているので、研究の進展は予想より早いと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目まで完成したワクチン(抗原、3種類の抗原を提示したバキュロウイルス、マウス細胞内で発現する抗原)をマウスBALB/c7の腹腔内に接種した後、ネオスポラ原虫を暴露することで、ワクチンとしての評価を行う。さらに、これらをカイコから生産し、効率よく精製する方法を検討する予定である。本研究の成果は、今後ナノバイオマテリアルを用いたワクチン開発の基盤を構築するものである。
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