2011 Fiscal Year Annual Research Report
疫病菌交配ホルモンの化学・生物学的解明と受容体探索
Project/Area Number |
22248012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小鹿 一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50152492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 新 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (30328546)
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Keywords | 疫病菌 / Phytophthora / 交配ホルモン / α2 / 有性生殖 / 卵胞子 / 受容体 |
Research Abstract |
ジャガイモなど重要農作物に感染し甚大な被害を与える疫病菌Phytopthoraは、有性生殖において交配ホルモン(α1とα2)を利用する。当該年度は普遍性のさらなる検証、構造活性相関、受容体探索を行い以下の成果を得た。 1.交配ホルモンの普遍性の検証 前年度に疫病菌約60株についてαホルモンに対する応答およびαホルモンの生産性を調べた結果、43%の株(62%の種)がホルモンに応答し、80%の株がホルモンを生産していることが分かり、普遍性の検証ができた。興味深いことに、40%の株が両方のホルモンを分泌しており、交配型の定義について今後の課題である。なお、重要なジャガイモ疫病菌については生育が悪く未完了であったので、次年度に再度検討する。 2.交配ホルモンα2の構造活性相関 前年度までにα1についての構造活性相関はほぼ完了したので、当該年度はα2の類縁体8種を合成し、A1交配型をもちいてホルモン活性を調べた。その結果、全ての官能基(3個の水酸基と二重結合)および中央付近の2か所の立体化学が活性に必須であることが分かった。 3.交配ホルモン受容体の探索 α1の蛍光プローブの合成に成功した。一方、疫病菌P.nicotianae(α1受容体をもつと考えられるA2交配型)から細胞膜タンパク質を抽出し、この抽出液を電気泳動で分析した。蛍光プローブで染色を試みたが、蛍光を示すバンドは得られていない。今後、光親和性標識プローブおよび磁気ビーズ標識プローブを合成し、受容体探索を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構造活性相関の研究は完了し国際誌に発表し、普遍性の検証も部分的に完了し国際誌に発表した。しかし、普遍性の検証を完全に証明するのにさらなる時間を要し、受容体探索については蛍光プローブの作成まで進んだものの、受容体候補の検出までは完了していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、普遍性検証を完了するため、最も培養の困難なジャガイモ疫病菌株の大量培養の条件検討を行ったうえでホルモン生産性の解析を行う。さらに、最も遅れている受容体探索に集中する。そのために、α1の光親和性標識プローブ、磁気ビーズプローブを合成し、選択的にラベル化あるいは濃縮されるタンパク質を精製する。α2については、どのような修飾もホルモン活性を消失させるので、放射性標識体を用いた受容体探索を行う必要があるが、合成法から新たに検討する予定である。
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