2012 Fiscal Year Annual Research Report
疫病菌交配ホルモンの化学・生物学的解明と受容体探索
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22248012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小鹿 一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50152492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 新 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (30328546)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疫病菌 / 交配ホルモン / 微生物 / 生理活性 / 受容体 / Phytophthora |
Research Abstract |
ジャガイモなど重要農作物に感染し甚大な被害を与える疫病菌Phytophthoraは、有性生殖において交配ホルモン(α1とα2)を利用する。当該年度はホルモンの普遍性の検証とホルモン受容体の探索を行い以下の成果を得た。 1.普遍性の検証: 疫病菌約60株(18種)についてαホルモンに対する応答およびαホルモンの生産性を調べた。その結果、43%の株(62%の種)がホルモンに応答し、80%の株がホルモンを生産していることが分かり、疫病菌におけるホルモンの普遍性を検証することができた。また、従来はA1交配型がα1を、A2交配型がα2を分泌することになっていたが、興味深いことに40%の株が両ホルモンを分泌することがわかり、従来応答性から論じられてきた交配型の定義について、ホルモン生産性からも考察する必要があることがわかった。 2.受容体細胞内分布解析: 受容体探索プローブとしてAlexaFluor488で蛍光標識したα1を合成し、疫病菌P. nicotianaeのA1およびA2交配型の菌糸を染色した。しかし、A2交配型(α1受容体をもつと考えられる)を選択的に染色することはできなかった。蛍光顕微鏡下で観測すると、菌糸全体が染色されていることから、脂溶性のαホルモン部分が菌体細胞壁に非特異的に吸着するため考えられた。 今後、光親和性標識プローブおよび磁気ビーズ標識プローブを合成し、受容体探索を進める。 3.受容体タンパク質解析: 疫病菌の菌体からタンパク質を抽出し電気泳動(ネイティブPAGE)で分離後、上記のα1蛍光プローブで染色を試みたが、蛍光顕微鏡下ではA1, A2間で明瞭な差異は見られなかった。原因として、脂溶性のαホルモン部分が菌体細胞壁に非特異的に吸着することが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、(1)疫病菌交配ホルモンの普遍性の検証、(2)ホルモン受容体の細胞内分布解析、(3)受容体タンパク質解析、を目標とした。(1)についてはほぼ完了し、データの解析と論文作成の準備を行っており概ね良好な進捗と言えるが、(2)(3)の受容体探索は、幾つかの実験を試みたにもかかわらず候補タンパク質も検出できていない。これは、蛍光プローブによる菌体の染色が細胞壁で非特異的に起こること、受容体の発現量が極めて低いことが原因と考えられた。受容体の同定は本課題の最終目的であるが、残る研究期間内に完了することが容易ではない状況と考えられたため、このように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
交配ホルモンα1の蛍光プローブを用いた細胞内受容体分布解析が成功しなかった原因として、菌体細胞壁への非特異的に吸着することが考えられた。そこで、非特異的結合の要因と考えられるプローブの脂溶性を抑えるためにリンカーをポリエチレングリコール型に変えた蛍光プローブを合成し菌体の染色を試みる。 また、アフィニティープローブを用いてタンパク質の部分精製を試みる。すなわち、α1をPEGリンカーを介して磁気ビーズに固定して受容体精製プローブを調製し、菌体から抽出したタンパク質とインキュベートし、結合タンパク質を電気泳動法により調べう。特異的なバンドが検出できたら、タンパク質解析を行う。 さらに、より高い受容体発現量の菌体を探索する。すなわち、上述の蛍光プローブを異なる条件(培地、培養日数)で培養した菌体の抽出タンパク質とインキュベートしゲル濾過カラムを用いてHPLCで分析し、タンパク質画分に特異的蛍光ピークが現れる条件を探る。
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