2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生誘導siRNAによる虚血性疾患の治療法開発
Project/Area Number |
22249016
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
芝崎 太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 参事研究員 (90300954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 暁宏 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (20332372)
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Keywords | 低酸素 / 血管新生 / HIF / DFAT / 心筋梗塞モデル / NIBS / ミニブタ / Int6 |
Research Abstract |
背景・目的:これまでに私達は、Int6が低酸素反応因子HIF(Hypoxia-inducible factor)のサブタイプのうちHIF2αと結合し、pVHL非依存的にHIF2αを分解すること、siRNAによるInt6ノックダウンがHIF2αを安定化させ、in vivoで血管新生を誘導することを報告した。このようなInt6/HIF2aの機序を解析を行い下記の結果を得た。 (結果①)Int6ノックダウンによる血管新生作用の臨床応用を目指し、大動物における虚血性疾患の治療効果の評価を行った。NIBSミニブタ(♂)の心臓左冠動脈前下行枝を2ヶ所結紮して急性心筋梗塞モデルを作製し、結紮部位周辺6ヶ所にミニブタInt6に対するsiRNAベクターを投与した。4週間後、血管新生により腹側血行路が形成され、結紮された前下行枝の下流への血流が回復していること心血管造影にて確認した。 (結果②)次に細胞にInt6-siRNAを、脱分化脂肪(DFAT)細胞に導入し、虚血部位へ細胞を移植することで組織の再生および血管新生を同時に誘導し治療効果を上昇させる細胞療法の確立を試みた。その結果、特定のsiRNA(Int6-si219)のみがHIF2α mRNAを上昇させることが確認された。 (結果③)Int6コンディショナルノックアウトマウス作製においては、ES細胞へのエレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser使用)を行った。G418耐性コロニーをピックアップしPCRおよびサザンブロットにて1クローンのポジティブ(Int6ヘテロCKO)クローンを選別した。 上記CKO ESクローンを用いて、マウス8細胞期胚との凝集法にて計10匹のCKOキメラを作製した。野生型マウスとの交配による産仔(F1)のGenotypingを行うことでGerm Line Transmissionを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(結果①)大動物のNIBSミニブタ(♂)を用いた心臓左冠動脈前下行枝結紮による急性心筋梗塞モデルでは、Int6-siRNAベクターを投与し、4週間後、血管新生により腹側血行路が形成され、結紮された前下行枝の下流への血流が回復していることが心血管造影にて確認できた。組織染色および心臓エコー検査の結果、対照群と比較して梗塞巣の縮小や心機能の回復には至っていないことが分かった。この原因として、ベクターを投与してから血管新生因子の放出、腹側血行路の形成までの間に虚血部位の心筋細胞が死滅してしまうことが考えられた。そのため、現状では急性虚血性疾患の治療への応用は難しいと考えられる。細胞の再生療法も加味した治療法の重要性を探るため、DFAT[細胞を含む細胞療法の可能性を探ってきた。 (結果②)Int6-siRNA (合成dsRNA)を導入した、脱分化脂肪(DFAT)細胞の移植では、特定のsiRNA(Int6-si219)のみがHIF2α mRNAを上昇させた。他の配列も調べた結果、Int6-si219によるHIF2α mRNA上昇には、Int6抑制による効果よりむしろsiRNAのオフターゲット効果が影響を及ぼしている可能性が高いと考えられた。このため多方面からオフターゲットに関わる因子の同定を行っている。 (結果③)野生型マウスとの交配による産仔(F1)のGenotypingを行うことでGerm Line Transmissionを確認したところ、135匹のF1の解析で生殖細胞への寄与は確認されなかった。使用したES細胞は他の遺伝子の改変において良好な結果が得られており、原因として相同組換えに用いたベクターに問題がある可能性が考えられたため、ベクターを改良および変更して再度ES細胞への導入と組換え体のスクリーニング、およびキメラ作製を行う必要があり、これらの実験を引き続き行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(結果①)大動物のNIBSミニブタ(♂)を用いた心臓左冠動脈前下行枝結紮による急性心筋梗塞モデルでは、Int6-siRNAベクターを投与時に心筋の動きに合わせ組織外へ漏れ出る可能性があることで、投与方法を改善することが重要である。4週間後、腹側血行路が形成されたにも拘わらず、梗塞巣の縮小や心機能の回復には至っていないことより、血管新生のみを誘導しても、梗塞にて死滅した心筋細胞を回復させることは不可能であり、この点からは心筋の再生と同時に血管新生を行う必要性が考えられた。 (結果②)上記①の結果にも関連するする研究内容であったが、Int6-siRNAを導入した脱分化脂肪(DFAT)細胞の移植では、特定のsiRNA(Int6-si219)のみがHIF2α mRNAを上昇させ、DFAT細胞ではsiRNAのオフターゲット効果も影響している可能性が結果として得られた。HIF2aが上昇し、血管新生が誘導される以外にもさらに重要なファクターがあると考えられたため、Int6-si219に配列近傍のmRNA (21merの配列中5ミスマッチ以内)のリストを作成し(RNAi社) DNA microarrayによる遺伝子発現データと組み合わせることで、HIF2αの発現に影響を及ぼす可能性のある遺伝子を探索したが、有力な候補を見出すには至らなかった。 (結果③)最初に得られた2クローンはサザンブロットで正しく相同組換えしていないことを確認したため、TVの3’ホモロジーアームが0.6kbと短かったことから、3’アームを5.7kbに伸長したベクターで再度スクリーニングを行っている。また、NeoR遺伝子の発現効率が悪い可能性もあり、NeoRの方向を逆転させることで改善される可能性がある。
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