2012 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスに対するホメオサーベイランスのダイナミクスと疾患制御
Project/Area Number |
22249025
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
田中 良哉 産業医科大学, 医学部, 教授 (30248562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 公俊 産業医科大学, その他部局等, 学長 (00153479)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
中村 利孝 産業医科大学, 医学部, 教授 (50082235)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ストレス科学 / ホメオサーベイランス / 酸化ストレス / 生存脳 / 神経伝達物質 / 免疫伝達物質 / 免疫系 / 代謝系 |
Research Abstract |
生体は多様なストレスを受容し、生存に不可欠な種々の反応を視床下部を中心とした生存脳の指令センターで受容し、免疫系や代謝系に出力することによりホメオサーベイランスを行う。本研究では、(1)ストレスセンシングから生存脳の指令センターへの入力経路、(2)生存脳から免疫系や代謝系への出力経路を明らかにし、ストレスに対するホメオサーベイランスのダイナミズムを解明する。 平成24年度まで、ストレスセンシングから生存脳への入力経路に関して検討した。遺伝子改変動物を用いた視床下部-自律神経系および視床下部-神経内分泌系の神経回路網の解析では、生存脳への入力経路にバゾプレシン系、オキシトシン系、TRPチャネルが関与することを解明した。また、ストレスによるDNA損傷による転写因子NF1B活性化、概日リズムの乱れによるWnt5a誘導など、入力経路の異常の分子機構を解明した。 一方、代表的な神経伝達物質ドパミンは、樹状細胞のD1様受容体を介してナイーブT細胞からTh17細胞への分化を誘導し、間葉系幹細胞のD2様受容体を介して単球から破骨細胞への成熟を阻害した。また、力学的ストレスはWnt1やPTHを介して間葉系幹細胞から骨芽細胞分化誘導、脂肪細胞分化抑制の出力経路の振り分けに関与し、生存脳から免疫、骨代謝系への出力経路に関与する事を解明した。 平成25年度は、Wnt5aやTRPV1、TRPV4ノックアウトマウス・ラットやヌードマウス移植系を用い、多様なストレスの生存脳への入力経路の分子機構を解明する。また、力学的ストレスやドパミン等を介する生存脳から骨格、免疫系への出力経路を、間葉系幹細胞-破骨細胞、樹状細胞-Th17, Tfh細胞を中心に解明する。さらに、生存脳からの出力系の調整を介した免疫、代謝疾患等の新たな制御戦略の構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度まで、ストレスセンシングから生存脳(視床下部)の指令センターへの入力経路、および、生存脳から免疫系や代謝系への出力経路を研究してきた。 ストレスを受容して視床下部へ入力する経路を解析するために、バゾプレッシン-eGFPやオキシトシン-mRFP1遺伝子導入などの遺伝子改変動物を用いた。その結果、疼痛ストレス・温度ストレスの入力経路に、バゾプレシン、オキシトシン、TRPV1, TRPV4チャネルが関与し、視床下部-自律神経系および神経内分泌系の神経回路網の存在が明らかになった。また、ストレスを生存脳に伝達する際、酸化ストレスや概日リズムの乱れはWnt10aの誘導を介して血管新生や間質新生を亢進させ、DNA損傷が転写因子NF-IBを介して細胞増殖に影響を及ぼすことを解明した。 一方、免疫系や代謝系へシグナルをアウトプットについては、代表的な神経伝達物質ドパミンは、D1様受容体を介して樹状細胞によるナイーブT細胞からTh17細胞への分化誘導、D2様受容体を介して単球から破骨細胞への成熟阻害の機能を有することを解明した。また、力学的ストレスはWnt1やPTHを介して間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を誘導し、PPARγ2やCEBP/βを介して脂肪細胞分化を抑制し、出力経路の振り分けに関与することを明らかにした。 以上、ストレスセンシングから生存脳への入力経路、生存脳から免疫系や代謝系への出力経路を関連付ける結果が得られ、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、生存脳を介したホメオサーベイランスのダイナミズムに着目し、生存脳から免疫・代謝系への出力経路を解明し、その調整を介した免疫、代謝疾患等の新たな制御戦略を目指す。 ①生存脳として機能する視床下部を中心としたストレス入力経路の解明(上田担当)バゾプレッシやオキシトシンの遺伝子導入ラット、c-fosとこれらの遺伝子の二重導入ラット、TRPV1、TRPV4遺伝子除去マウス等を用いて、慢性疼痛等のストレスに対する視床下部-自律神経系・神経内分泌系の神経回路網の役割を解析する。 ②ストレスの生存脳への入力経路の分子メカニズムに関する研究(河野担当)Wnt10aノックアウトマウスなどを用いて、酸化ストレスなどによるDNA損傷により誘導されるNF-IBおよび概日リズムの乱れにより誘導されるWnt10aの発生、発育、臓器組織の形態・機能等の生体情報を解析し、腫瘍増殖や創傷治癒等の過程における生理機能を明らかにする。 ③生存脳から骨・免疫系への出力経路の解明(田中担当)ドパミンを媒介とする生存脳から骨格、免疫系への出力経路を解析する。即ち、ドパミンによる間葉系幹細胞による破骨細胞成熟誘導の調節、樹状細胞によるTh17, Tfh細胞分化誘導の調節機構を解明し、それらの制御を介した免疫、代謝疾患等の新たな制御戦略の構築を目指す。 ④力学的ストレス-生存脳-骨代謝調節軸に於ける出力経路の解明(酒井担当)クライミングマウスを用いた荷重負荷実験と尾部懸垂マウスを用いた非荷重実験系に於けるwnt/β-cateninおよびPTH/PTHrP受容体を介したシグナルを中心に、力学的ストレスの増減による間葉系幹細胞から骨芽細胞・脂肪細胞への分化振り分けのメカニズムを解明する。
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Research Products
(41 results)
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[Journal Article] A JAK inhibitor tofacitinib regulates synovitis through inhibition of IFN-γ and IL-17 production by human CD4+ T cells.2012
Author(s)
Maeshima K, Yamaoaka K Kubo s, Nakano K, Iwata S, Saito K, Ohishi M, Miyahara H, Tanaka S, Ishi K, Yoshimatsu H, Tanaka Y.
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Journal Title
Arthritis Rheum
Volume: 64
Pages: 1790-1798
Peer Reviewed
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[Journal Article] Overexpression of Peroxiredoxin 4 Attenuates Atherosclerosis in Apolipoprotein E Knockout Mice.2012
Author(s)
Guo, X., Yamada, S., Tanimoto, A., Ding, Y., Wang, K.Y., Shimajiri, S., Murata, Y., Kimura, S., Tasaki, T., Nabeshima, A., Watanabe, T., Kohno, K., Sasaguri, Y.
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Journal Title
Antioxid Redox Signal.
Volume: 17(10)
Pages: 1362-1375
Peer Reviewed
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[Journal Article] Prognostic significance of BAF57 expression in patients with endometrial carcinoma.2012
Author(s)
Kagami, S., Kurita, T., Kawagoe, T., Toki, N., Matsuura, Y., Hachisuga, T., Matsuyama, A., Hashimoto, H., Izumi, H., Kohno, K.
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Journal Title
Histol Histopathol.
Volume: 27(5)
Pages: 593-599
Peer Reviewed
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[Journal Article] Association of Nuclear YB-1 Localization With Lung Resistance-related Protein and Epidermal Growth Factor Receptor Expression in Lung Cancer.2012
Author(s)
Hyogotani, A., Ito, K., Yoshida, K., Izumi, H., Kohno, K., Amano, J.
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Journal Title
Clin. Lung Cancer
Volume: 13(5)
Pages: 375-384
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clinical significance of mitochondrial transcription factor A expression in patients with colorectal cancer.2012
Author(s)
Nakayama, Y., Yamauchi, M., Minagawa, N., Torigoe, T., Izumi, H., Kohno, K., Yamaguchi, K.
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Journal Title
Oncol. Rep.
Volume: 27(5)
Pages: 1325-1330
Peer Reviewed
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[Journal Article] Strong YB-1 expression is associated with liver metastasis progression and predicts shorter disease-free survival in advanced gastric cancer.2012
Author(s)
Wu, Y., Yamada, S., Izumi, H., Li, Z., Shimajiri, S., Wang, K.Y., Liu, Y.P., Kohno, K., Sasaguri, Y
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Journal Title
J. Surg. Oncol.
Volume: 105(7)
Pages: 724-730
Peer Reviewed
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[Journal Article] Alteration of Y-box binding protein-1 expression modifies the response to endocrine therapy in estrogen receptor-positive breast cancer.2012
Author(s)
Ito, T., Kamijo, S., Izumi, H., Kohno, K., Amano, J., Ito, K.
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Journal Title
Breast Cancer Res Treat.
Volume: 133(1)
Pages: 145-159
Peer Reviewed
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[Journal Article] nduction of arginine vasopressin-enhanced green fluorescent protein expression in the locus coeruleus following kainic acid-induced seizures in rats.2012
Author(s)
Ohno, M. Fujihara, H. Iwanaga, M. Todoroki, M. Katoh, A. Ohbuchi, T. Ishikura, T. Hamamura, A. Hachisuka, K. & Ueta, Y.
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Journal Title
Stress
Volume: 15(4)
Pages: 435-442
Peer Reviewed
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