2012 Fiscal Year Annual Research Report
臨床的応用に視点を置いたリンパ行性微小癌転移機構解明の体系的研究
Project/Area Number |
22249052
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大橋 俊夫 信州大学, 医学部, 教授 (80020832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 佳子 信州大学, 医学部, 准教授 (10362112)
安嶋 久美子 信州大学, 医学部, 助教 (70584051)
永井 崇 信州大学, 医学部, 助教 (50514353)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 循環生理学 / リンパ系 / 癌転移 / リンパ節 / 微小環境 |
Research Abstract |
センチネルリンパ節を生理学的視点から読み直してみると、癌原発巣から最も多量のリンパ液が流れ込んでいるリンパ節と言い換えることができるとの作業仮説の下、ラット・マウスの小動物からミニブタの大動物を用いて実験を行った。すなわち(1)ラットの尾部に流れ刺激によってリンパ管内皮細胞から分泌されると同濃度のATPを外因的に投与し、24時間後に所属リンパ節内の微小環境の変化を、接着因子ICAM-1の発現を指標として検討した。(2)培養したヒト乳癌細胞株に流れ刺激を負荷してその微小環境のATP濃度、炭酸ガス分圧変化を測定し、その特性を解析した。最後に(3)ミニブタの胃のセンチネルリンパ節を超音波を用いて可視化する方法を開発し、超音波感受性の分子マーカーを用いてその微小環境の形成の仕組みを解明した。以上により、リンパの流れがセンチネルリンパ節の微小環境変化にどのような変化を及ぼし、それがリンパ行性癌転移にどのような影響を及ぼすのか検討した。その結果、(1)センチネルリンパ節の直近の輸入リンパ管内皮細胞は流れ刺激に応じて細胞表面にあるF1/F0 ATP synthaseを活性化し、ATPと水素イオンを共分泌し、高炭酸ガスでしかも酸性化した微小環境を形成していることを見出した。(2)分泌されたATPは同時に細胞表面膜に分布するPurinergie P2Y受容体を刺激して、表面に分布するATPase活性を高め、分泌されたATPを迅速に分解していることも発見した。さらに(3)高炭酸ガス環境はリンパ液を流れるマクロファージや樹状細胞の活性を変化させる可能性についても解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センチネルリンパ節の内部環境の変化様式と微小癌転移を制御する因子群の基礎的研究を今年度までにほぼ終了し、リンパ行性癌転移の早期診断や特異的なDDSを用いた治療方針を立てるのに十分な対象物質の絞り込みを成し得た。来年度はそれらの絞り込んだ物質を用いて臨床応用に結びつけるための臨床前研究を実施できる状態を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]リンパ管内皮細胞-腫瘍細胞間に特異的に発現する接着因子の遺伝子改変動物を作製し、腫瘍細胞のリンパ行性微小癌転移機構の変化について生体顕微鏡システム(現有設備)を用いて体系的に検討する [2]ラット・マウスのリンパ節内リンパ管のin-vitroならびにin-situ灌流標本を用いて、腫瘍細胞、腫瘍免疫賦活状態の樹状細胞、Tリンパ球等とリンパ節内リンパ管内皮細胞との相互作用を生体顕微鏡システム(現有設備)を用いて定量的に解析する。あわせてその相互作用に関与する接着物質を同定し、その物質のクローニングを行なう。 [3]リンパ管新生機構や癌細胞のリンパ行性転移機構に関する上記のすべての実験結果を踏まえて、癌細胞のリンパ行性転移を抑制するための薬物あるいは理学的療法について検討する。さらに前哨リンパ節(sentinel lymph node)内の微小癌転移有無を評価する診断方法を考案し、臨床応用に発展させるための予備実験を行なう。
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