2012 Fiscal Year Annual Research Report
連続流ポンプを用いた体内埋込式完全人工心臓の総合的基礎研究
Project/Area Number |
22249053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 裕輔 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90193010)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 連続流ポンプ / 完全人工心臓 / 螺旋流ポンプ / 生理的制御 / ハイブリッド |
Research Abstract |
完全人工心臓は、心臓を置換するタイプの人工心臓であり、究極の心臓代替デバイスとして大きな期待がよせられている。小型高性能な体内埋込式完全人工心臓を開発するためには、デバイス、病態生理および制御系に関する基礎研究が必要である。また、生体適合性の向上も重要な課題であり、特に抗血栓性に関しては、抗凝固療法を必要としない要素技術の開発が必須である。今年度は、昨年度開発した螺旋流完全人工心臓を量産し合計6頭のヤギに埋め込み慢性動物実験を行った。いずれの例も解剖学的適合性は良好であった。結果としては、術中人工心肺の影響で脳症となったものが2例、心房がポンプに吸引されるサッキング現象による急激な負荷変動により動圧軸受けが破損してポンプが停止したものが2例、ケーブルの断線によりポンプが停止したものが1例、残りの1例は、動圧力を高めた動圧軸受けを開発し、またサッキング制御を高めたプログラムを適応して、抗凝固療法無しで現在3か月生存中である。計測制御では、昨年度開発した絶対圧センサーユニットを左右血液ポンプのインフロー部分に内蔵した。体内に埋め込んだ圧センサーは校正が困難であるため、校正を必要としない方法として、センサー出力波形から心房圧を計測するロジックの基礎研究を行った。また、流量の計測に関しては、電磁流量計を埋め込むことは困難であるため、モーターの回転数とトルクからテーブル方式により差圧と流量を推定する方法を提案し、基礎研究を行った。抗血栓性向上のためにハイブリッドパーツを開発しているが、昨年度開発したハイブリッドカニューレは剛性不足であったため、今年度は心材の剛性を高めたスカッフォールドを作成した。現在、左心バイパスによる慢性動物実験を行うために、新しいハイブリッドカニューレのスカッフォールドをヤギの皮下に埋め込みハイブリッド化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
螺旋流完全人工心臓に関しては、昨年度に当初の計画以上に開発が進展したために、今年度は慢性動物実験に集中して取り組むことができた。今年度は、慢性動物実験により解剖学的適合性と制御アルゴリズムの開発を中心に行い、3か月以上の長期生存による病態生理の解明は来年度に行う予定であったが、今年度既に3か月の長期生存を達成した。波動型完全人工心臓に関しては、螺旋流完全人工心臓の開発が当初の予定以上に進展し、波動型完全人工心臓の代わりに螺旋流人工心臓を使用して循環生理の研究ができる段階に達したため、波動型完全人工心臓の開発を予定より早く終了し、螺旋流完全人工心臓の開発に勢力を集中した。計測制御系の開発に関しては、螺旋流完全人工心臓専用の制御系の開発および計測制御アルゴリズムの基礎研究を行っているが、おおむね順調に進展している。ハイブリッドパーツに関しては、昨年度の研究が当初の計画以上に進展して心材の剛性不足という問題点を見いだしたため、今年度は改良した新しいスカッフォールドの開発を行っており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、計画通り、螺旋流完全人工心臓の完成度の向上をめざしてさらなる研究と開発を進める。特に、動物実験により、効率および溶血特性の向上およびサッキング防止制御アルゴリズムの開発が必須の課題として浮上したため、デバイスを細部にわたり改良し、また新しい制御アルゴリズムを開発して、螺旋流完全人工心臓の完成度を向上させる。また、複数頭による長期慢性動物実験を遂行して、病態生理の研究を行うとともに、抗血栓性や耐久性に関する検討を行い、運動負荷実験などで循環生理の研究を行う。さらに、体内完全埋込式螺旋流完全人工心臓を完成させるために、システム化に関する研究と開発を行う。また、左心バイパス実験によりハイブリッドパーツを完成させ、螺旋流完全人工心臓に適用を試みる。なお、現在、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Research Products
(23 results)