2012 Fiscal Year Annual Research Report
トルコ・韓国・日本における森林資源の高次元多機能経済評価と国際生態系保全政策分析
Project/Area Number |
22252002
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
吉本 敦 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10264350)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 森林資源管理 / 数理経済 / 数理統計 / 生態系サービス / 国際貿易 / 経済 ・政策分析 |
Research Abstract |
本研究では,社会経済構造及び資源利用環境の異なるトルコ,韓国,日本において,森林資源の多面的な機能を特定し,それらを“多次元的な財”と捉え,その動態を定量的に把握する.そして,開発・保全政策の動向に伴う森林資源利用変化の“財”への影響を地域的な利用及び国際的な貿易の枠組みを用いて,需給動態の関係を描写できるモデルを構築し,開発と生態系保全を両立できる生態系保全政策の探求,分析及び提言を行う. 平成24年度の研究成果は以下の通りである.1) “多次元的な財”の1つである文化的サービスの経済評価について,美的景観評価をもとに,森林レクリエーションパスの最適化モデルを構築した.2)“多次元的な財”の1つである調整サービスの評価については,侵略的外来種拡散モデルおよび病虫害伝播モデルのシミュレーションモデルと管理シミュレーションモデルと結合し,シナリオ分析を行った.特に,侵略的外来種拡散モデルはlong distance dispersalのメカニズムを取り入れたシミュレーションを行った.3) 調査フィールドの一つである東京大学北海道演習林において収集・蓄積された標準地データをもとに,一般化線形混合モデルおよび地理的加重回帰モデルによってトドマツ更新木の空間的な分布パターンの解析を試みた.4)自然災害リスク評価法として,ロジスティック回帰および多項ロジット回帰分析におけるモデル選択手法の適用を行った.冠雪害における実解析を行い,リスク要因を特定した結果,様々な先行研究における分析と同様の結果が得られ,本手法がリスク解析において有用であることを示すことができた.5)森林成長3-D 可視化モデルの構築に向け,生育環境条件の異なる様々な樹種について,3次元位置測定装置による運動解析システムを導入し,フィールド調査を実施した.また,立木の空間配置を再現できる3次元可視化モデルに改良した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の計画として,リストアップした事項に関連する研究を進めることができた. 例えば,「森林美的景観評価モデルの構築と管理最適化モデルとの結合」に関しては,美的景観評価をもとに,森林レクリエーションパスの最適化モデルを構築した.「外来種拡散モデル・病虫害伝播モデルと管理最適化モデルの結合」についても,侵略的外来種拡散モデルおよび病虫害伝播モデルのシミュレーションモデルと管理シミュレーションモデルと結合し,シナリオ分析を行った.さらに,侵略的外来種拡散モデルはlong distance dispersalのメカニズムを取り入れたシミュレーションを行った.「生息地評価モデルと森林ランドスケープ管理最適化モデルの結合」については,引き続き,データ収集とモデルの改良・拡張を進めている.「選択過程を表現する統計モデルの構築」に関しては,自然災害リスク評価法として,ロジスティック回帰および多項ロジット回帰分析におけるモデル選択手法の適用を行い,この手法の有効性を確認した.「3-D 可視化モデルの構築」については,3次元位置測定装置による運動解析システムを用いた調査を生育環境条件の異なる様々な樹種について行い,データ収集・解析を進めている.さらに,これまでの単木の3次元可視化モデルから,複数の立木の空間配置を再現できる3次元可視化モデルに拡張した.3次元可視化モデルによる解析についても,樹木の形状を定量評価できるツールを追加して3次元可視化モデルソフトウェアの改良を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は,引き続き空間時系列データの収集・蓄積を行い,前年度に構築した森林最適化モデルの拡張および,生態系サービス評価シミュレーションモデルと最適化モデルとの結合,3次元可視化モデルと森林成長モデルの改良・拡張を行う.さらに,政策シミュレーションや経済分析に繋げる.今後の具体的な課題は下記の通りである.(1)これまで,森林資源の利用と生物種の生息地保全・維持のトレードオフの分析を念頭にモデル構築を進めてきた.今年度も引き続き,この結合モデルの応用を進めていく.(2)森林レクリエーションパスの最適化モデルを基に,周辺土地利用変化を考慮に入れた問題への拡張を始め,応用範囲を広げたモデル構築と分析を行う.(3)侵略的外来種拡散および病虫害伝播モデルを管理最適化モデルと結合させ,効果的かつ効率的な森林管理の探索が可能なシステムを構築する.また,long distance dispersalのメカニズムを考慮した管理のシミュレーション・最適化も合わせて行う.(4)空間的な環境の違いや環境的な要因による樹木の形状,および,成長の違いを明らかにするため,様々な樹種について,複数のプロットを設置し,3次元位置測定装置によるデータ収集を行う.(5)最適なモデルを探索するため,その選択過程を表現する統計モデルを構築し,様々な森林データに適用、その結果の評価から統計手法の更なる洗練を行う.(6)地理的加重回帰モデルによって森林資源の空間的な分布パターンを解析し,森林の更新に影響を与える環境要因の特定に繋げる.(7)各モデルの統合を結合を検討し,統合的土地利用最適化モデルを構築する.このモデルを用いて政策シミュレーション・経済分析を行う.
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Research Products
(15 results)