2013 Fiscal Year Annual Research Report
トルコ・韓国・日本における森林資源の高次元多機能経済評価と国際生態系保全政策分析
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22252002
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
吉本 敦 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (10264350)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生態系サービス / 時空間最適化土地利用モデル |
Research Abstract |
本年度は、侵略的外来種拡散モデルと時空間的土地利用最適化モデルを統合したプロトタイプのモデルを構築し、生態系サービス維持に対する外来種による被害関数導入の基礎モデルを開発した。具体的には、防御などの管理に対して拡散速度だけでなく、飛散する種子の数も減少しながら、実施される管理の空間配置に対して拡散の時空間パターンが反応する、外来種拡散モデルを時空間的土地利用最適化モデルに結合したプロトタイプモデルである。これまでは、一様に隣接セルにのみ拡散する単純な拡散モデルであったが、本研究で構築した最適化モデルの利用により、これまで評価できなかった外来種拡散に対する空間管理の効果を分析することが可能となる。 森林の3次元可視化モデルについては、東北、関東、九州の各地域で3次元データの収集と3次元モデルの構築を行った。また、森林資源の3次元データ収集の効率化を図るため、試験的に3次元フォトグラメトリの技術の導入や遠隔誘導式小型回転翼機による空撮を試みた。今後、森林生態系の3次元可視化による景観効果を生態系サービス供給モデルに組み込む上で、これらの技術の導入による資源測定が3次元データ収集の効率化において重要な役割を果たすものと考える。 生態系サービス需要に関して、様々な野外活動を行う際の人々の景観に対する選考についてアンケート調査を行った。この調査結果は、最適レクリエーションルート探索、あるいは過度な利用箇所の特定などの解析を行う上での基礎情報となり、景観の維持と好ましい景観を効率的に巡回することが可能なレクリエーション利用管理の探索が可能となる。 資源管理におけるリスク分析については、自然災害データ(標高・斜度など)に対して、ロジスティック回帰および多項ロジット回帰を行いリスク要因の特定を行った。今後はリスク要因が場所(軽度・緯度など)によって連続的に変化するようなモデルを考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予定していた通り、侵略的外来種拡散モデルと時空間的土地利用最適化モデルを統合することができた。また、森林成長モデルと森林の3次元可視化モデルについても、各地域で追加的にデータ収集を行うことができ、各種データ収集の効率性を高めるための新たな技術(3次元フォトグラメトリや遠隔誘導式小型回転翼機)の導入ができた。更に、生態系サービスの需要側のデータについてもアンケート調査を実施し、収集することができた。リスク分析については、地理情報を考慮したモデル開発も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は生態系サービスを考慮できる森林管理に対する状態・空間最適化モデルの拡張、生態系サービス評価シミュレーションモデル修正と最適化モデルの結合、生態系サービスの重要事項である視覚的景観評価に対応できる3次元可視化モデルの構築、及び3次元データの導入による森林成長モデルの改良・拡張を行う。 同時に、これまで取り組んできた研究の成果をまとめ、国際シンポジウムの企画・発表、及び各種学術論文集への投稿を行う。 具体的には、(1) 固有生態系サービス維持に対する被害関数の推定のための外来種拡散・病虫害伝播モデルの構築・修正と森林資源管理の状態・空間最適化モデルとの結合による総合モデルの構築とシナリオ分析による政策分析を行う。(2)生態系景観評価モデルを基にした生態系サービス需要に関しては、前年度、収集した景観に対する選好についてのアンケート調査の結果をもとに、生態系景観サービス需要に対する最適経路モデルを構築する。 (3)森林成長モデルと3次元可視化モデルについては、本年度も、引き続き、3次元位置測定装置による運動解析システムを用いて、フィールド調査を実施し、樹木の3次元データ・立木位置情報、周辺環境のデータを収集・蓄積し、3次元森林成長モデルの改良・拡張を行う。そして、これらにより新たに得られるデータと、前年度までに収集・蓄積してきたデータを評価・比較・分析する。(4)選択過程を表現する統計モデルの改良・拡張については、上記のような様々な問題で取り扱うモデルに関して「最適なモデル」を探索するため、その選択過程を表現する統計モデルの構築を継続し、様々な森林データへの適用、その結果の評価から統計手法の更なる改良を行う。(5) 生態系サービス供給・需要関数の推定を用いて木材貿易の逆問題としての生態系サービス貿易モデルの構築を行い、貿易を軸とした生態系サービス持続政策へのシナリオ分析を行う。
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Research Products
(6 results)