2011 Fiscal Year Annual Research Report
中間圏・下部熱圏における大気波動のレーダーネットワーク観測
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22253006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 敏隆 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (30115886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新堀 淳樹 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (30555678)
橋口 典子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (70452480)
林 寛生 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70447936)
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Keywords | 中間圏・熱圏下部領域 / 赤道大気 / 大気波動 / 大気重力波 / 大気潮汐 / 長期変動 / 流星レーダー / 中波帯レーダー |
Research Abstract |
本課題では、地球大気の高度約60-150 kmに位置する中間圏・熱圏下部領域(MLT: Mesosphere – Lower Thermosphere)における風速の長期・短期変動特性を、アジア域の低緯度帯で運用されているレーダー観測結果を用いて国際共同研究する。MLT領域には、下層の対流圏で起こる気象擾乱や人為起源の環境変化(温暖化)の影響が届いている。一方、MLT領域は太陽風を起源とする高エネルギー粒子や地球磁場を介した電磁気エネルギーの影響も受けている。MLT領域は地球環境と惑星間宇宙のインターフェース域であり、また物理化学過程も遷移する重要な高度層である。 我々は、高度70-120 km の風速を測定する流星レーダーおよび中波帯(MF)レーダーを、過去20年以上にわたりインドネシアで運用している。具体的には、1992年にジャカルタ郊外に流星レーダー、1995年に西カリマンタンにMFレーダー、2002年に西スマトラに流星レーダー、2004年に西ジャワ島にMFレーダーを建設した。本研究課題では、情報通信研究機構(NICT)と共同で、新たに流星レーダーを西パプアのビアク島に平成23年6月に建設した。これにより、インドネシア国内で東西約4,000 kmに広がるレーダー観測網が完成し、さらに、南インドのMFレーダー、豪州北部のMFレーダー、さらに、米国が太平洋(クリスマス島、カウアイ島、キリバス)で運用しているMFレーダーを加えて、インド洋から太平洋に至る広い経度帯にまたがるMLTレーダーネットワークが構築された。 これらの観測データを用いて、赤道大気のMLT領域における平均風の長周期トレンドおよび長周期変動(半年、1年、準2年、季節内振動)、および各種の大気波動(赤道波、大気重力波、潮汐波等)の特性を研究している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア航空宇宙庁(LAPAN)、京大RISHおよび通信情報研究機構(NICT)との3者間の共同研究契約により、NICTが長年にわたり小金井市で運用してきた流星レーダーを、インドネシアの東端にあたるパプア州のビアク島(1S, 136E)のLAPAN観測所に移設した。4基のアンテナで構成される受信干渉計を建設し、システム調整を経て、平成23年6月に観測を開始した。一方、インドネシア西端の西スマトラ州コトタバン(0S, 100E)では、2002年以来流星レーダーを連続運用している。これら2台の流星レーダーは、同じメーカーが製造したシステムであり、風速の観測精度ならびに時間・高度分解能も同等である。これらを赤道のほぼ同緯度に設置したことで、赤道域のMLT高度における風速の経度変化を研究するのに最適なデータが得られる。従来、中規模以下の風速擾乱を除けば、風速場は経度方向に一様と考えられていたが、初期解析からは多様な変動が起こっている可能性が示唆されており、今後の研究成果が楽しみである。 インドネシア国内の流星・MFレーダー、および南インドおよび太平洋域のMFレーダーを加えて、約20年間にわたる大量の観測データが整備された。これらを統計解析することで、以下の成果を得た。 1. 大気潮汐波のうち、3倍高調波(8時間周期)の振幅の年周変動が緯度に依存することが明らかになった。 2. MLT高度における大気重力波の活動度が一日周期で変動し、さらにその変動が下層の積雲対流の強度と相関があることが分かった。 3. MLT高度の大気重力波と同領域の東西風の半年周期振動とに明らかな相関関係があることが発見された。 これらの研究成果を4篇の学術論文として公表し、さらに1件を論文投稿した(H25年4月現時点では刊行済み)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題ではアジア・オセアニアの低緯度域におけるMLT領域の風速変動特性を、流星/MFレーダーによる観測データを解析することで明らかにすることを目的としている。この研究課題自体は平成22(2010)年度からの5年計画であるが、それに先立ち、我々は様々な研究経費によりレーダー観測を継続してきた。また、外国の研究グループも同様にレーダー観測を実施している。これらの一覧を下記にまとめる。(注:*は現在も運用中) 【インドネシア】ジャカルタ郊外: 流星レーダー、1992~1999年、京大・LAPAN 西カリマンタン・ポンチアナ: MFレーダー、1995年~、京大・LAPAN・豪アデレイド大 (*)、西スマトラ・コトタバン:流星レーダー、2002年~、京大・LAPAN (*) 、西ジャワ・パムンプク:流星レーダー、2004年~、京大・LAPAN (*)、パプア・ビアク:流星レーダー、2011年~、京大・NICT・LAPAN (*)【インド】南インド・ティルネルベリ:MFレーダー、1992年~、インド地磁気研究所 (*)【太平洋】クリスマス島:MFレーダー、1990~1997年、豪アデレイド大、ハワイ・カウアイ島:MFレーダー、1990~2007年、米CoRA、キリバス・ララトンガ:MFレーダー、2003~2008年、米CoRA 今後、インドネシア国内の4台の流星/MFレーダーの運用を継続する予定である。同時に、上記の9台のレーダーについて、国際協力をもとに観測結果をデータベースとして整理し、長期間にわたる風速変動の統計解析を行う基盤を整備しつつある。これを用いた解析により、MLT高度の平均風の東西および南北成分が10年以上の長期トレンドを示すことが分かったが、今後、それが温暖化あるいは太陽活動と関係するのかを解明すべく相関解析を進める。
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Research Products
(35 results)
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[Journal Article] Comparison of diurnal tide in models and ground-based observations during the 2005 equinox CAWSES tidal campaign2012
Author(s)
Chang, L.C., W.E. Ward, S.E. Palo, J. Du, D.-Y. Wang, H.-L. Liu, M.E. Hagan, Y. Portnyagin, J. Oberheide, L.P. Goncharenko, T. Nakamura, P. Hoffmann, W. Singer, P. Batista, B. Clemesha, A.H. Manson, D.M. Riggin, C.-Y. She, T. Tsuda and T. Yuan
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Journal Title
Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics
Volume: 78-79
Pages: 19-30
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 地磁気静穏日変化(Sq)の長期トレンドから推察される超高層大気変動について(Upper atmospheric variation inferred from the long-term trend in the geomagnetic solar quiet daily variation)2012
Author(s)
新堀 淳樹, 小山幸伸, 能勢正仁, 林寛生, 堀智昭, 大塚雄一, 浅井歩, 磯部洋明, 横山正樹, 上野悟, 塩田大幸,羽田裕子, 北井礼三郎, 津田敏隆
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ、千葉市
Year and Date
20120520-20120525
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[Presentation] Inter-university Upper atmosphere Global Observation NETwork (IUGONET)2011
Author(s)
H. Hayashi, Y. Koyama, T. Hori, Y. Tanaka, M. Kagitani, A. Shinbori, S. Abe, T. Kouno, D. Yoshida, S. Ueno
Organizer
The 1st ICSU World Data System Conference - Global Data for Global Science -
Place of Presentation
Clock Tower, Kyoto University
Year and Date
20110903-20110906
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[Presentation] Inter-university Upper atmosphere Global Observation NETwork (IUGONET)2011
Author(s)
HAYASHI, Hiroo、KOYAMA, Y、HORI, T、TANAKA, Y、KAGITANI, M、SHINBORI, A、ABE, S、KOUNO, T、 YOSHIDA, D、UENO, S、KANEDA, N、YONEDA, M、IUGONET project team
Organizer
2011 International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) General Assembly
Place of Presentation
Melbourne Convention & Exhibition Centre, Melbourne, Australia
Year and Date
20110628-20110707
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[Presentation] Seasonal dependence of geomagnetic field variations on the ground associated with geomagnetic sudden commencements2011
Author(s)
SHINBORI, Atsuki、TSUJI, Y、KIKUCHI, T、ARAKI, T、IKEDA, A、UOZUMI, T、SOLOVYEV, S. I.、SHEVSTOV, B. M.、OTADOY, R.E.S.、UTADA, H、NAGATSUMA, T, HAYASHI, H、YUMOTO, K、IUGONET project team
Organizer
2011 International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) General Assembly
Place of Presentation
Melbourne Convention & Exhibition Centre, Melbourne, Australia
Year and Date
20110628-20110707
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