2012 Fiscal Year Annual Research Report
中間圏・下部熱圏における大気波動のレーダーネットワーク観測
Project/Area Number |
22253006
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 敏隆 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (30115886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 寛生 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (70447936)
橋口 典子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (70452480)
新堀 淳樹 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (30555678)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中間圏・熱圏下部領域 / 赤道大気 / 大気波動 / 大気重力波 / 大気潮汐 / 長期変動 / 流星レーダー / 中波帯レーダー |
Research Abstract |
本課題では、地球大気の高度約60-150 kmに位置する中間圏・熱圏下部領域(MLT:Mesosphere – Lower Thermosphere)における風速の長期・短期変動特性について、アジア・オセアニア域の低緯度帯で運用されている大気レーダー(流星レーダーおよび中波帯[MF]レーダー)による観測結果を用いて国際共同研究を進めている。MLT領域は、対流圏で起こっている気象擾乱や人為起源の環境変化(温暖化など)と、太陽風を起源とする高エネルギー粒子や地球磁場を介した電磁気エネルギーの双方の影響を受ける。そのため、MLT領域は地球環境と惑星間宇宙のインターフェース域であり、また物理化学過程も遷移する興味深い高度域である。 本課題では、高度70-120 km での風速を測定する流星レーダー、及び中波帯[MF]レーダーを用いる。我々は、1992年に流星レーダーをジャカルタ以来インドネシアで運用している。具体的には、1992年にインドネシアのジャカルタ郊外に流星レーダーを設置して以来、1995年に西カリマンタンにMFレーダー、2002年に西スマトラの赤道滝レーダーサイトに流星レーダー、2004年に西ジャワ島南岸にMFレーダーを運用してきており、さらに、流星レーダーを西パプアのビアク島に2011年6月に建設した。これにより、インドネシア国内で東西約4,000 kmに広がるレーダー観測網が構築できた。南インドのMFレーダー、およびオーストラリアと米国が太平洋(クリスマス島、カウアイ島、キリバス)で運用しているMFレーダー等を加えて、インドから太平洋に至る広い経度帯におけるレーダーで取得されたデータの相互利用システムを開発した。 これらのレーダー観測データを中心に、地上観測および衛星データを併用して、MLT領域における力学過程:平均風の長期トレンド、半年・1年・準2年・季節内振動、及び各種の大気波動(赤道ケルビン波、プラネタリ波、大気潮汐、大気重力波等)の特性を研究している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア国内における4基の流星/MFレーダーにより、赤道MLT高度(60-100 km)における良質な風速データをインターネット上で自動取得してきた。さらに、2013年6月に西スマトラ州コトタバンとパプア州ビアク島に設置された流星レーダーのシステム点検が豪州のGENESIS社によって行われた。しかし、2013年末~2014年初に雷害等により、これらのうち2基のレーダーが不調をきたしたので、再稼働に向けて調整を進めている。 1990年代以降、インド~インドネシア~太平洋域で約10台のレーダーにより継続された観測結果を集約することにより、長期かつ幅広い地理経度に広がる領域で、MLT高度の観測データベースを構築することができた。これらの観測データのメタ情報を抽出し、メタデータ共有システムに登録することで、インターネット上で観測データの検索および取得が容易になった。データの可視化、相互相関解析、トレンド検定、高度なスペクトル解析などを行うデータ解析ソフトウェアの開発も行った。このデータ解析システムを利用することで、MLT高度における力学過程に関して以下の研究成果を得た。 1.大気潮汐波のひとつである8時間周期波の年々変動の緯度変化を明らかにした。2.MLT高度における大気重力波の活動度が1日周期で変動し、下層の積雲対流の強度と相関があることが分かった。3.MLT高度で顕著である半年周期振動の振幅が、3-4月に増大する現象が2-3年おき起こっており、これが下部成層圏における準2年周期振動と同期していることが分かった。さらに、上部成層圏における半年周期振動とも相関が認められる。また、MLT高度の重力波および大気潮汐の活動度とも関係すると思われる。 これらの研究成果を国内外の学会で講演するとともに、学術論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシア国内の4台の流星/MFレーダーの運用を継続し、データベースを拡充する。これらに加え、外国の研究グループによるレーダーも加えて、1990-2014年に運用された下記のレーダーについて統合的なデータベースを構築する。(注:*は現在も運用中)インドネシア ジャカルタ郊外: 流星レーダー、1992~1999年、京大・LAPAN、西カリマンタン: MFレーダー、1995年~、京大・LAPAN・豪アデレイド大 (*)、西スマトラ:流星レーダー、2002年~、京大・LAPAN (*) 、西ジャワ:MFレーダー、2004年~、京大・LAPAN (*)、パプア:流星レーダー、2011年~、京大・NICT・LAPAN (*)、インド ティルネルベリ:MFレーダー、1992年~、インド地磁気研究所 (*)、太平洋 クリスマス島:MFレーダー、1990~1997年、豪アデレイド大、ハワイ・カウアイ島:MFレーダー、1990~2007年、米CoRA、キリバス・ララトンガ:MFレーダー、2003~2008年、米CoRA これら、アジア・オセアニアの低緯度域に展開している流星/MFレーダーから取得された風速データについて、既に開発しているデータ解析システムに統合する。下層大気データ等との相関解析を組み合わせて、MLT域における長期の風速データの統計解析を行い、平均風の長期トレンド、長周期変動、及び各種の大気波動の特性を明らかにする。 平成26年度が本課題の最終年度にあたることから、研究会を開催して成果を集大成するとともに、今後の観測継続を検討する。
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[Journal Article] INTER-UNIVERSITY UPPER ATMOSPHERE GLOBAL OBSERVATION NETWORK (IUGONET)2013
Author(s)
H. Hayashi, Y. Koyama, T. Hori, Y. Tanaka, S. Abe, A. Shinbori, M. Kagitani, T. Kouno, D. Yoshida, S. UeNo, N. Kaneda, M. Yoneda, N. Umemura, H. Tadokoro, T.Motoba, and IUGONET project team
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Journal Title
Data Sci. J.
Volume: 12
Pages: 179-184
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Comparison of diurnal tide in models and ground-based observations during the 2005 equinox CAWSES tidal campaign2012
Author(s)
Chang, L.C., W.E. Ward, S.E. Palo, J. Du, D.-Y. Wang, H.-L. Liu, M.E. Hagan, Y. Portnyagin, J. Oberheide, L.P. Goncharenko, T. Nakamura, P. Hoffmann, W. Singer, P. Batista, B. Clemesha, A.H. Manson, D.M. Riggin, C.-Y. She, T. Tsuda and T. Yuan
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Journal Title
Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics
Volume: 78-79
Pages: 19-30
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 赤道ファウンテン2012
Author(s)
津田敏隆
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ、千葉市
Year and Date
20120520-20120525
Invited
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[Presentation] 地磁気静穏日変化(Sq)の長期トレンドから推察される超高層大気変動について(Upper atmospheric variation inferred from the long-term trend in the geomagnetic solar quiet daily variation)2012
Author(s)
新堀 淳樹, 小山幸伸, 能勢正仁, 林寛生, 堀智昭, 大塚雄一, 浅井歩, 磯部洋明, 横山正樹, 上野悟, 塩田大幸,羽田裕子, 北井礼三郎, 津田敏隆
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ、千葉市
Year and Date
20120520-20120520