2013 Fiscal Year Annual Research Report
中間圏・下部熱圏における大気波動のレーダーネットワーク観測
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22253006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 敏隆 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (30115886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新堀 淳樹 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (30555678)
橋口 典子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (70452480)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中間圏・下部熱圏領域 / 赤道大気 / 大気波動 / 大気重力波 / 大気潮汐 / 長期変動 / 流星レーダー / 中波帯レーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、地球大気の高度60-150 kmに位置する中間圏・下部熱圏領域(MLT: Mesosphere and Lower-Thermosphere)の風速や大気波動の長期・短期変動特性について、アジア・オセアニア域の赤道-低緯度帯で運用されている大気レーダー(流星レーダーおよび中波帯(MF)レーダー)による観測結果を用いて国際共同研究を進めた。MLT領域では、対流圏で発生する気象擾乱や人為起源による環境変化(地球温暖化など)と、太陽活動による影響を受けている。そのため、この領域は地球環境と太陽惑星間宇宙の接合域であり、また物理化学過程も遷移する興味深い高度域である。 ここでは、高度80-110 kmの風速を測定する流星レーダー、およびMFレーダーを用いる。我々は、1990年代よりインドネシアの研究機関(LAPAN、BPPT等)と共同で赤道大気の力学過程を研究している。具体的には、1992年に流星レーダーをジャカルタ郊外に設置し、1995年に西カリマンタン(Pontianak)にMFレーダー、2002年に西スマトラ(Koto Tabang)に流星レーダー、2004年に西ジャワ島南岸(Pameungpeuk)にMFレーダーを運用し、さらに、2011年に西パプア(Biak)に流星レーダーを建設した。これにより、インドネシア国内で東西約4000 kmに広がるレーダー観測網を構築できた。また、南インド(Tirunelveli)のMFレーダーとオーストラリアと米国が太平洋(Christmas Is., Kauai, Kiribati)で運用している流星・MFレーダーを加えて、インドから太平洋に至る大気レーダーデータをインターネット上で相互利用可能なデータ解析システムを開発した。 これらのレーダーデータを用い、地上・衛星観測データを援用することで、MLT領域の力学過程、平均風の長期トレンド、半年・1年・準2年・季節内振動、及び各種の大気波動(赤道ケルビン波、プラネタリー波、大気潮汐、大気重力波等)の特性を研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も継続してインドネシア国内の4基の流星/MFレーダーから得られる赤道MLT高度(60-100 km)の良質な風速データをインターネット上で自動取得することができた。また、2013年10月に落雷等の影響によって相次いで故障したビアクとコトタバンの流星レーダーの修理・点検がGENESYS社によって進められ、2014年8月にコトタバンの流星レーダーが、同年12月末にビアクの流星レーダーを再稼働させることができた。 1990年代以降、インド~インドネシア~太平洋域で約10基の流星/MFレーダーにより得られた観測データを集約することにより、長期かつ広範な地理経度を網羅するMLT高度の観測データベースを構築することができた。本年度もこれらの観測データのメタ情報の抽出を継続して行い、メタデータ共有システムに登録することによって、長期の観測データの検索、取得、および解析が容易に実施できる環境を整備してきた。また、これらの風速データを可視化、相関解析するソフトウェアの作成も行った。このデータ解析システムを長期の流星/MFレーダーデータに適用することによって、MLT高度領域における力学過程についての以下の研究結果を得た。 1. MLT高度で顕著である半年周期変動の振幅が3-4月に増大する現象が2-3年おきに観測されていたが、2002年以降ではその現象が観測されにくくなったことが分かった。2. Hocking法を用いてMLT高度の力学過程を理解する上で不可欠な運動量フラックスを流星レーダーから導出することを試みた。3.MLT高度における1日周期の大気潮汐波の振幅が準2年周期をもって変動することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシア国内の4基の流星/MFレーダーの運用を継続し、データベースの拡充およびメタ情報データベースへの登録更新を引き続き行う。これらのデータベースへの登録、更新対象の大気レーダーデータは以下の通りである。(注:*は現在も運用中) 信楽:流星レーダー、1979~1992年、京大、インドネシア・ジャカルタ郊外:流星レーダー、1992~1999年、京大・LAPAN、西カリマンタン:MFレーダー、1995年~、京大・LAPAN・豪アデレイド大(*)、西スマトラ:流星レーダー、2002年~、京大・LAPAN(*)、西ジャワ:MFレーダー、2004年~、京大・LAPAN(*)、パプア:流星レーダー、2011年~、京大・NICT・LAPAN(*)、インド・ティルネリベリ:MFレーダー、1992年~、インド地磁気研究所(*)、太平洋・クリスマス島:MFレーダー、1990~1997年、豪アデレイド大、ハワイ・カウワイ島:MFレーダー、1990~2007年、米CoRA、キリバス・ララトンガ:MFレーダー、2003~2008年、米CoRA これまで構築してきたアジア・オセアニア域に展開している流星/MFレーダーから取得された風速データベースとデータ解析システムを活用して、MLT域における背景風や大気波動の活動度の長期変動特性を明らかにする。この際、下層大気の観測データやモデルによる客観解析データも援用する。
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] 超高層物理学分野のメタデータ・データベースへの連想検索の適用2014
Author(s)
小山幸伸,阿部修司,八木学,梅村宜生,堀智昭,新堀淳樹,佐藤由佳,家森俊彦,田中良昌,橋口典子,上野悟,谷田貝亜紀代
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Journal Title
宇宙科学情報解析論文誌
Volume: 3
Pages: 89-97
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Analysis software for upper atmospheric data developed by the IUGONET project and its application to polar science2013
Author(s)
Yoshimasa Tanaka, Atsuki Shinbori, Tomoaki Hori, Yukinobu Koyama, Shuji Abe, Norio Umemura, Yuka Sato, Manabu Yagi, Satoru UeNo, Akiyo Yatagai, Yasunobu Ogawa and Yoshizumi Miyoshi
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Journal Title
Advances in Polar Science
Volume: 24
Pages: 231-240
Peer Reviewed / Open Access
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