2012 Fiscal Year Annual Research Report
ジャワ島中部ソロ川上中流域における地域資源適正利用による環境創造型農村空間の構築
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22255012
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
横山 繁樹 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (30425590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 一宏 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00372087)
飯泉 佳子 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (00414996)
小林 慎太郎 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, 研究員 (10508550)
石田 章 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (50346376)
山下 裕作 熊本大学, 社会文化科学研究科, 教授 (50414438)
内田 諭 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (60425535)
川島 滋和 宮城大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80404846)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境共生型農林水産業 / 農業経済学 / 地理情報システム / 水環境 / 民俗学 / インドネシア |
Research Abstract |
時系列MODISデータを用いて水稲作付時期判別モデルを開発しジャワ島の水稲作付時期と降水変動との関係を分析し、ソロ川中流域の洪水・干ばつ危険度分布を示した。ソロ川支流のクドゥワン川小流域をデジタル標高データより抽出し、土地利用、傾斜分布の特性を把握した。クドゥワン川の本・支川で水質、水位、濁度、気象要素(雨量、風速、日射量、温度、湿度)を測定し、水文モデルへの入力データ及び検証用データを蓄積した。ウォノギリ県の試験圃場で栽培実験を行い、傾斜枠から流出する水と土砂について観測を行った。 ウォノギリ県の農家調査により、クローブの蕾が収穫可能になる7年まで成長すれば、面積あたり収入は食料作物の数倍に増大する可能性を示した。クローブの集荷業者、普及員等を対象に生産・流通に関する問題を調査した。定量分析により、世帯と個人のフードセキュリティに対して、世帯主年齢、世帯員数、自然災害・経済ショックが負の影響を、教育水準、金融資産、居住地域の経済水準、親族ネットワーク、出稼ぎ農外就業者数、有用樹保有、農業多様化が正の影響をもたらすことを指摘した。畑作物の生産費調査を行い、水田および畑地における主要作物の生産費データを揃え、農産物の流通チャンネルを明らかにし、ウォノギリ県産業連関表推計のためのデータベースを構築した。子供の仕事・遊びについての民俗調査では、60~80年前の「子供のころの体験」を語って貰い、当時の農村環境と多様な環境利用、生活の貧しさと現在に至る農村経済政策の住民レベルにおける効果を明らかにした。 ウォノギリ県での付加価値型農業振興の参考に、アチェ州のコーヒー生産者組合を調査した。当組合はFLO、欧米の有機認証を取得、組合員から購入した豆を自前の工場で加工し海外へ輸出している。組合員はコーヒー販売から現金収入を得るとともに、プレミアム資金を公共整備などの社会開発に投資している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水文・気象・土壌流出に関して、水文モデル構築と検証に必要なデータがほぼ整備された。土地利用判別手法はその有効性を確認した上で、小流域レベルで標高、降水量、土地利用、傾斜分布の特性から危険度分布を示した。 社会経済調査では、世帯・個人レベルでのフードセキュリティに影響を与える要因を明らかにし、水稲、畑作物、野菜、有用樹の生産費を把握して農家経営分析のデータを整備した。また、県レベルの行政統計を再集計して、地域産業連関表作成に必要なデータを整えた。 フェアトレード・コーヒーの事例調査から、ウォノギリ県での環境共生・高付加価値型農業振興の課題を考察した。さらに、民俗調査によって、地域住民の環境認識、環境向上に対する意向を把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
クドゥワン流域の2.5mメッシュ土地利用データ判別精度検証のため現地調査を行う。降雨分布特性を分析し、土地利用、地形条件と組み合わせ、土砂流出ポテンシャル分布を示す。適切な資源管理を農村レベルで判断することを支援するための地理情報の活用方策を検討する。試験圃場における栽培作物と流出土砂量の関係について解析するとともに、クドゥワン川流域に物理型モデルを適用し、流域からの水・土砂の流出を総合的に評価する。 これまでの農家経済調査をまとめ、クローブと食料作物の収益構造を比較・分析する。主に農家の時間割引率と多年生作物のリスクに焦点を当て農家行動のモデル化を図り、食料作物からクローブ等の換金作物へと転換するのに必要な経営的諸条件等を解明する。また、上記の農家行動のモデルに土壌流出等の外部経済コストを取りこみ、適切なファーミングシステムを構築するための経営モデルを検討する。世帯および個人のフードセキュリティの水準に影響を及ぼす社会経済的要因について、経済や農業の条件が異なる地域間の比較・検討を行う。 環境共生型農業の比較対象として、スマトラにある森林破壊を伴って栽培されているコーヒー栽培地、コーヒーと並んでインドネシアにおいて重要な商品作物であるアブラヤシ生産者組合を視察し、環境に調和した持続可能なコーヒー栽培のあり方を検討する。農業語彙、子供の仕事・遊び、農村の芸能と民間信仰の相互関連性を考察し農村生活の特質を明らかにし、環境創造型農村空間の構築に必要な要素を抽出する。ウォノギリ県の産業連関表を完成し、それを用いて斜面災害の増加で農業が衰退するシナリオ、持続的農業技術を導入するシナリオ、農業以外の地域活性化策が行われるシナリオの下、産業連関分析で波及効果の分析を行う。その結果から、ウォノギリ県の地域資源利用のあるべき方向性を考察する。
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Research Products
(18 results)