2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300004
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 雅史 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (00135419)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分散システム / 自己組織化 / 乱歩 / マルコフ連鎖 |
Research Abstract |
分散システムを構成する要素数の巨大性はシステム制御の困難性の最大の要因である。巨大な分散システムでは、各構成要素が無視できない程度にシステムの変化は大きくなるにも係わらず、各構成要素が収集可能な局所情報が大域情報に占める割合は無視できる程度に小さくなる。このような特徴を持つ巨大分散システムに自律性を付与するための方法論を確立することが本研究の目的である。本年度は、特に、(確率的な)自己組織性と自己安定性に焦点を合わせて業績欄に示す成果を上げた。その中の一部を具体的に説明する。 分散システムの自己組織性の中で最も単純なものが、一点への集合である。この問題は単純であるが、非常に深い問題を内包しており、実際に、ある意味で最も困難な問題になっている。業績[Izumi et al, 2012]ではこの問題を解決するために必要十分な大域的な情報の量を明らかにした業績[Shantanu et al, 2012]は、従来から行っていた、分散システムにおける名前の持つ意味に関する検討成果をまとめたものであり、各プロセスがその状態に依存する「名前」を持つことができる場合について、その機能がシステムの計算能力に与える影響を検討したものである。高度な自律性の付与にはランダム性の適用が効果があることが分かりつつあるが、確率的な分散システムの主要な道具であるマルコフ連鎖の理論を分散システムの研究に直接適用することが困難であった理由の一つは、トポロジーが頻繁に変化することが特徴である分散システム上のマルコフ連鎖の理論が整備されていなかったことにある。業績[Koba et al, 2012]では、動的グラフ上の乱歩(マルコフ連鎖)を検討した。業績[Hosaka et al, 2012]では、確率的システムの実行時間の評価に対応する、乱歩の到達時間や全訪問時間を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要および業績欄に示したように、研究はおおよそ順調に推移している。もちろん、すべての理論研究に共通するように、研究が終了することはほとんどなく、研究の進展は、関連する新しい問題の発見と、未解決で残されている困難な問題について、それが困難であることの認識への到達によって計量される。我々の場合も同様であって、たとえば、業績[Izumi et al, 2012]について言えば、最も困難な場合が未解決で残されていて、今後、検討を続ける予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に述べるのは研究開始時から並列に行っている研究において、その進展に従って新しく現れて来た課題であって、他の研究も引き続き並列に実行する. すでに述べたように、分散システムを構成する要素数の巨大性はシステム制御の困難性の最大の要因である。この問題を解決するために、我々は、従来から、自己安定性や自己組織性などの自律性に焦点を合わせて、その実現方法を理論的に検討してきた。これらはどちらもある定常的な状態に「安定」を求めることが主要な目的になっている。しかし、いくつかのシステムでは、定常状態に安定することではなく、安定して「振動」的に動作することが重要な性質であるシステムもまた存在する。このような自律的な振動の発生は特に生物学分野では重要視されている。本年度分として、すでに申請している研究課題の他に、自律的な安定な振動の発生とこれまで検討してきた自己安定性や自己組織性との関連を本年度は興味を持って研究してゆきたい。
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