Outline of Annual Research Achievements |
分散システムを構成する要素数の巨大性はシステム制御の困難性の最大の要因である。巨大な分散システムでは、各構成要素が無視できない程度にシステムの変化は大きくなるにも係わらず、各構成要素が収集可能な局所情報が大域情報に占める割合は無視できる程度に小さくなる。このような特徴を持つ巨大分散システムに自律性を付与するための方法論を確立することが本研究の目的である。 本研究では, 基本的な自律性である自己組織化, すなわち, 自己安定的なパターン形成問題を主要な研究対象とし, 自己安定的なパターン形成を可能にする要件, および, パターン形成アルゴリズムを構成するための方法論(およびアルゴリズムそのもの)を, 1)分散システムのモデル, 2) ランダム性, 3) 匿名性, 4) 無記憶性, 5) 局所性という側面から検討を進めてきた. そして, 多くの結果を, 特に, 1),2), 3), 4) に関して得た. 得た結論, すなわち, 自律性が自然分散システムでは容易に実現できるのにも関わらず, 人工分散システムでは実現が困難である理由を述べる. 1) 自律分散ロボット群のパターン形成問題はロボットが匿名であるなら, ロボット間の同期の程度や局所記憶の量はパターン形成能力に影響を与えない(ことを示した). 2)一方で, 匿名で無記憶なパターン形成アルゴリズムは自己安定的である(ことが比較的容易に分かる). 3) 匿名ロボットシステムの本質的な困難さはロボット間の対称性を崩すことの困難性であり, この点で,名前を持つロボットシステムに劣るが, 匿名性の欠点はランダム性を導入することで除去できる(ことを示した). これが, 本基盤研究の成果の概要であり, ランダム性, 非同期性, 匿名性, 無記憶性などの困難性を持つ自然分散システムが自律性に富む理由である.
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