2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300028
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菊池 浩明 東海大学, 情報通信学部, 教授 (20266365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 淳 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (90376963)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プライバシー保護 / 情報セキュリティ / 疫学調査 / データマイニング |
Research Abstract |
本研究では,病歴と患者リストを管理する病院Xと喫煙や放射線従事者などの個人属性を有する組織Yの間で,喫煙とがん罹患率の相関を解析する疫学調査を目的とする.病歴は最も機微なプライバシー情報であり,組織を超えて比較を行うことが困難である.そこで,暗号理論に基づくプライバシー保護データマイニングプロトコル技術を適用し,XとYの持つ個人情報を漏らすことなく,個体集合(喫煙)B の元での罹患率A を表す条件付確率P(A|B)を計算することを試みる.従来のモデルと異なり,組織A とB がそれぞれの個体識別番号を独立に管理している仮定の上での計算に本研究の独創性がある.本研究で開発するプライバシー保護疫学調査システムは,罹患率だけではなく,異なる組織間での商品推薦など幅広い応用に適用の可能性を持つ. 平成25年度には,(3) プライバシーを保護した疫学調査プロトコルの設計, (4) プライバシーを保護した疫学調査システムの実装に取り掛かった.ピロリ菌の感染者と胃がんの相対危険度を安全に評価する方式と千葉がんセンターのデータを用いた実験結果を人工知能学会のシンポジウムにて発表した.また,最新のデータマイニング技術の研究成果を方式に採用するために,ACMのシンポジウムKDD'13に参加し,技術調査を行った.効率的に疫学調査を実施するためのBloom Filterに基づくベイズ推定方式を情報処理学会コンピュータセキュリティシンポジウムCSS'13にて提案したところ,方式の新規性が評価され優秀論文賞を受賞した.昨年度発表した研究成果の一部を国際会議NBiS'12にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した通り,プライバシーを保護した疫学調査プロトコルを複数提案し,その試験実装を行なうことが出来た.また,ピロリ菌と胃がんの実データに提案方式を適用し,正しく疫学調査が実施できることを確認した.従って,当初計画していた(1) プライバシー保護データマイニングの調査,(2) がん疫学調査,(3) 疫学プロトコルの設計,(4) 提案方式の実装,(5) 実データへの適用,(6) 改良の内,(6)を除くほぼ全課題に進展が見られる.5課題/6課題 = 83%の達成度と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,これまでの成果をまとめて,国際会議やジャーナル論文にまとめることを試みる.また,昨年度の実験結果より,提案方式にはまだ改良の方向性があることが分かってきた.例えば,基本的な相対危険度の代わりに,疫学分野で広く用いられているロジスティック回帰とオッズ比を用いたリスク評価などの課題が残されている.そこで,これらに着手することを本年度の追加方針とする.
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