2011 Fiscal Year Annual Research Report
立体音像再生の制約を緩和する動的バイノーラル音における頭部運動の役割に関する研究
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22300061
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
平原 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (80395087)
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Keywords | バイノーラル音 / 立体音像知覚 / 頭部運動 / 音像定位 |
Research Abstract |
バイノーラル信号によって再生される立体音像の知覚において受聴者の頭部運動が果たす役割を体系的に明らかにすることを目的として、平成23度は以下の研究を行った。 第一に、実音源を実耳受聴する条件と、ダミーヘッドで収録したバイノーラル音をイヤホンで受聴する条件で、平面と正中面の音像定位実験を行った。また、音像定位実験中の頭部運動を記録し、それらを解析した。その結果、水平面でも正中面でも、実験条件によらず、音源信号の帯域幅が広くても狭くても、受聴者に頭部回転運動を許すと音像定位正答率は高くなった。また、正中面の音像定位に対してもヨー(回旋)方向の頭部運動が有効で、その運動戦略はより大きく回旋させるというものであることがわかった 第二に、被験者の頭部運動に伴う自然な音像の動きを妨げる、あるいは被験者の頭部運動に伴って予測される音像の動きとは異なる動きを実現する頭部運動変換ルーチンを作成し、どのような頭部運動変換関数が音像定位を阻害/促進するかについての予備実験を行った。その結果、運動速度と運動方向を修飾する運動変換関数はその修飾の多寡によらず、音像定位を促進することがわかった。 第三に、頭部運動に伴う何の情報が、音像定位をし易くするのかを明らかにするために、手腕でダミーヘッドの運動を制御したときの音像定位実験を行った結果、手腕部で制御しても頭部で制御しても、同程度に音像定位しやすくなることがわかった。 第四に、聴覚系と運動系が相互作用する神経生理学的知見を調査した結果、聴覚系の音像定位処理における頭部運動の寄与についての神経生理学的な知見はほとんど無いことがわかった。 第五に、音像定位実験に用いるバイノーラル音を合成するために、頭部伝達関数の高速計測システムを構築した。 また、それを用いた計測過程で、両耳間時間差の周波数依存性の成因が頭部の反射による受音波形の位相のずれであることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた、(1)正中面音像定位における頭部運動の効果、(2)音像定位を行う際の被験者の頭部の動き、(3)音像定位に用いる頭部運動戦略、(4)聴覚系の音像定位処理における頭部運動の寄与についての神経生理学的理解の到達点を明らかにする、という4つの目的はほぼ達成したから。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、作成したテレヘッドを用いて、いくつかの条件で正中面および水平面の音像定位実験を行い、頭部運動が音像定位を阻害、促進する頭部運動変換条件をより詳細に明らかにする。なお、当初計画ではテレヘッドは2自由度のものを作成する予定であったが、これまでの実験結果より1自由度で十会音像定位できることが明らかになったために、従来どおり1自由度のシステムを構築した。 次に、聴覚系の音像定位処理における頭部運動の寄与に関する神経生理学的基盤の理解の現状について総括する。
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