Research Abstract |
現在,薬品のコンビニ等での販売開始や食品のトレーサビリティ表示などに伴い,消費者が開示情報に基づいて商品を選ぶようになってきている。しかし,科学的情報を読み取る訓練を受けていない一般消費者は,正しい知識を持たないまま専門的情報の理解と判断の責任が課せられている。本課題ではこの状況を打開するために,心理学を利用して医と食に関する情報バリアフリー化技術の基礎的知見を集積した。 具体的には,医薬品のパッケージにおけるリスク情報の誘目性を高めるデザインを提案し,眼球運動計測手法を用いてその有効性を検証した。そして,医薬品を購入する際の消費者行動について,若者や外国人など幅広い層の消費者を対象に検討し,食品については,文字の読めない幼児によるアルコール誤認を防ぐ新たな酒マークの考案とその評価を行った。より多くの人々へ情報を的確に伝える情報ユニバーサルデザイン(UD)の基礎的知見を得るとともに,応用的方策の提案とその検証も実施した。 また,新たな食品として注目される植物工場製の野菜について,安全性の認知や購買意欲に広告やロゴデザインがどのように影響するかを,情報的・情動的要因について調査や実験で検討した。さらに,多感覚知覚や乳児の知覚など,幅広い観点から食についての心理学的知見を得た。情報伝達における情動の相互作用や,食における多感覚統合など,人間の認知機能の観点から情報UDを実現させる知見も得た。 これらの研究成果については,その多くをすでに論文として公表したり,学会等で発表したりしたところである。したがって,医と食の安心・安全の創出に大きく貢献する心理学的・デザイン的知見を集積するだけでなく,いくつかの知見はすでに製品に応用できる段階に達している。今後も本課題のような研究を推進し,その成果をより効果的に社会へ還元していくつもりである。
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