2011 Fiscal Year Annual Research Report
ChIP-on-chip法による再生初期遺伝子群の同定とラット視神経再生への応用
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22300109
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 聖 金沢大学, 医学系, 教授 (10019614)
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Keywords | 魚 / 視神経再生 / 細胞生存 / 軸索再伸長 / HDAC-2 / ラット |
Research Abstract |
これまでに熱ショック蛋白70(HSP70)の発現が、視神経損傷後速やかに、ゼブラフィッシュ網膜神経節細胞(RGCs)で上昇することを見つけた。その役割は、HSP70インヒビターの使用により、細胞死の抑制に効いていることを明らかにした。このことは、視神経再生が起きるためには、まず第一番に神経細胞の生存が維持されねばならないことを意味する。次いで、軸索再生の分子が動くことが予想される。そこで今年度は、視神経再生に重要なもう一つの要素、軸索伸長に関する研究を施行した。その結果、ゼブラフィッシュでは、視神経損傷後速やかにピストンのアセチル化(AcH3)がRGCsで誘導されることを、免疫発色法で発見した。一方、再生できない哺乳類では、AcH3が損傷後速やかにRGCsから減少することを見い出した。つまり、魚では視神経損傷後、何らかの理由で速やかにヒストン脱アセチル化酵素-2(HDAC-2)の抑制が起こり、AcH3が誘導され、必要な遺伝子の発現がエピジェネティックに誘導されることが明らかとなった。一方、再生のできない哺乳類では、視神経損傷後速やかにAcH3の減少が起こり、必要な再生分子の誘導ができないものと思われる。しかし、哺乳類においても、HDAC-2阻害剤でHDAC-2の活性を抑制することにより、AcH3が誘導され、軸索再生に必要な遺伝子、例えばレチノイン酸レセプターβ(RARβ)や軸索伸長マーカー分子、成長関連蛋白43(GAP43)の発現を誘導することを見つけた。現在、哺乳類網膜との比較を行ないながら、このエピジェネティックなクロマチンのリモデリング機構を精査し、新たな神経再生の糸口を探索している所である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視神経再生の可能な魚類のRGCsでの遺伝子発現をヒントに、視神経再生の不可能な哺乳類での再生を試みるというのが本実験の最終目標である。1年目の研究でHSP70が早期に発現誘導され、神経生存に大きく関わることを見い出し、本年度においては、魚では視神経損傷後速やかにヒストン脱アセチル化酵素-2(HDAC2)の抑制が起こり、ヒストンがアセチル化し、一方哺乳類では、アセチル化ピストンが損傷後速やかに減少することを見い出した。ピストンのアセチル化を切り口とした新しいエピジェネティックな研究が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
魚の中枢神経は哺乳類と異なり、損傷を受けても再生が可能である。このことは、魚では視神経損傷により、エピジェネティックにクロマチンの構造が変化し、種々の神経再生分子の転写が活性化することを意味する。HSP70分子の誘導を転機として、クロマチンのリモデリング機構による神経再生機構研究を想いついた。今後は特に軸索伸長作用を持つレチノイン酸レセプターβ(RARβ)の誘導を試み、ラットの視神経の再生をめざす。その際Nogoレセプターの阻害も同時に行い、目に見える形で視神経再生を実現したい。
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Research Products
(6 results)