2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会性の個人差を決める脳メカニズムの解明とその利用
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22300139
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
春野 雅彦 (独)情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター・脳情報通信融合研究室, 専攻研究員 (40395124)
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Keywords | 神経科学 / 社会的意思決定 / 扁桃体 / 側坐核 |
Research Abstract |
本年度は直観的な公平性に依存した意思決定に扁桃体-側坐核回路が重要な働きをすることを、認知負荷を伴う社会ゲームを用いたfMRI実験により明らかにした。500円をどのように分割するかに関する提案者からの提案を受け入れるかどうかを被験者に決定させる最終提案ゲームの課題を用いた。提案を受け入れれば提案通りお金が分配されるが、拒否すると両者の取り分は0となる。250円-250円といった公平な提案はほぼ全ての被験者が受け入れるが、400円-100円といった不公平な提案では拒否する被験者が出てくる。行動的にはprosocialの被験者ではindividualistより有意に拒否率が高かった。また、認知負荷をかけた状態ではprosocialとindividualistの差がより明確になった。このことは、prosocial、individualistといった性質が(認知的ではない)直観的な試行に基づき表出することを示している。fMRIにより脳活動を調査したところ、prosocial,individualistの被験者群で認知負荷を掛けた状態では扁桃体-側坐核に活動差が見られるのに対し、認知負荷を掛けずに自由に考えられる状況ではこの活動差が見られなくなった。さらに両方のグループでこの扁桃体-側坐核の脳活動は各被験者の認知負荷をかけた状態と、認知負荷をかけていない状態での社会ゲームにおける拒否率の違いを反映していることが明らかとなった。またSPMのVoxel-Based Morphometryにより脳の構造差を検討した結果、左扁桃体外側部(basolateral amygdala)においては、individualistの被験者グループの方が灰白質密度が高いことを見出した。これらのデータは、直観的な社会的意思決定には側坐核、扁桃体といった皮質下の脳領域が本質的な役割を果たすことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直観的な社会的意思決定における皮質下領域の重要性が明らかとなり、さらにその皮質領域との関係も分かりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は皮質下領域、皮質領域双方の社会的意思決定における詳細な情報表現を明らかにし、ニューロフィードバックを用いた行動制御の実験につなげる。
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