2010 Fiscal Year Annual Research Report
フォトサーマル効果による経皮ワクチン増強に関する研究
Project/Area Number |
22300158
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新留 琢郎 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (20264210)
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Keywords | 金ナノ粒子 / 金ナノロッド / 近赤外光 / フォトサーマル治療_ / バイオイメージング |
Research Abstract |
金ナノロッドは近赤外光を吸収すると発熱し、近傍を加熱できる。本研究では、金ナノロッドの発熱効果により皮膚の角質層の透過性を亢進させ、タンパク質を効果的に体内にデリバリーするシステムを開発することを目的としている。この技術はインシュリンによる糖尿病の治療や、抗原タンパク質によるワクチンとなり、光照射と組み合わせた簡便・安価なシステムは新しい医療技術として期待される。 本年度は金ナノロッドとインシュリンを内部にもつSolid-in-Oilエマルジョンを作製し、これを皮膚に塗布し、近赤外光を照射することによるインシュリンの経皮デリバリーについて評価した。フランツ拡散セルを用いたin vitroでの皮膚透過性を評価した結果、金ナノロッドの発熱効果により大幅にインシュリンの皮内への移行効率が向上した。また、ストレプトゾトシンを投与して作製した糖尿病モデルマウスに、この経皮デリバリーシステムを適用した。具体的には、円筒カップを皮膚に接着し、そこへエマルジョンを入れ、近赤外光を上部から照射した。その後、同エマルジョンを染みこませたセルロースパッチを貼り付けた。その結果、金ナノロッドと近赤外光を組み合わせた場合において、有意な血糖値の低下かが観察された。ただし、血糖値が下がるまで6~10時間かかり、インシュリンを単独で皮下に投与した場合と比べて、応答が遅いことがわかった。 このように、血糖値低下というインシュリンの効果を実際に確認することに成功した。しかし、血糖値を正確にコントロールするには、エマルジョンの投与量、時間、また、光照射の強度、時間と行った詳細な条件検討が必要である。
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