2011 Fiscal Year Annual Research Report
a‐C:Hコーティングによる小型高機能補助人工心臓の開発に関する研究
Project/Area Number |
22300160
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
福井 康裕 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60112877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟久保 昭夫 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00307670)
大越 康晴 東京電機大学, 理工学部, 助教 (10408643)
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Keywords | 補助人工心臓 / 軸流血液ポンプ / フッ素ドープa-C:H被膜 / 表面処理 / 溶血低減効果 / 表面エネルギー |
Research Abstract |
H23年度は、a-C:H被膜の溶血低減効果について検討を行うため、ブラシレスDCモータと動圧軸受を取除き、血液流路と羽根部で構成される試験ポンプを用いて、溶血実験を実施した。本実験で使用した軸流血液ポンプには、表面粗さを0.46μmに研磨したSUS304製のインペラを用いた。このインペラ表面へ、イオン化蒸着法により、フッ素をドープしたa-C:H(以下、a-C:H:Fと記す)膜を1[μm]形成し、ヘマトクリット値33[%]に調整したブタ血液を用いて、流量5[L/min]、圧楊程100[mmHg]、血液充填量500[ml]の条件にて、in-vitroによる溶血実験を行った。インペラ表面へa-C:H:F被膜を施すことにより、インペラの表面粗さは0.46[μm]から0.48[μm]に増加した。しかしながら、180分間の溶血試験においてa-C:H:F被膜の有無による溶血量を比較した結果、a-C:H被膜により、実験終了時の溶血量は1110[mg/dl]から925[mg/dl]と減少し、約20%の溶血低減効果が認められた。 溶血量としては非常に高いレベルの血液ポンプではあるが、SUS304製インペラにおいて、a-C:H:F被膜により、約20%程度の溶血低減効果が得られた。この要因として、a-C:H:F被膜により、血液接触面となるインペラ表面にC-F結合が形成し、表面エネルギーが減少したことが挙げられる。すなわち、a-C:H:F被膜により、表面粗さは僅かながら増加したものの、a-C:H:F被膜のインペラ表面全体においては、表面エネルギーが減少したと考えられる。その結果、赤血球に対しせん断応力が低下し、溶血低減効果が得られたものと考えられる。このことから、a-C:H:F被膜をインペラ表面へ施すことにより溶血量が低減し、血液ポンプの溶血性能を向上が見込まれることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度では、インペラ表面へフッ素ドープa-C:H被膜を施す手法を確立し、被膜無および従来のa-C:H被膜と比較して20%の溶血低減効果が得られた。フッ素ドープにより溶血低減効果が得られることが明らかとなり、当初の計画に沿って順調に展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、本研究で開発中の血液ポンプにて発生する溶血の絶対量の低減化に努める。既に、フッ素ドープa-C:H被膜により溶血低減効果が得られた一方で、溶血量としてはかなり高い値となっている。溶血量は、ポンプ構成に強く依存することから、再度、血液ポンプのインペラの形状・構成を中心に検討を行い、溶血量の改善に取り組む。 溶血の改善後、慢性動物実験へと移行し生体適合性の評価、抗血栓性・溶血性の評価、また長期使用における自己心への影響を生理学的視点から解明する予定である。
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Research Products
(11 results)