2012 Fiscal Year Annual Research Report
成長因子の構造安定化と放出制御機能を兼備した血管再生用マテリアルの創製
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22300165
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大谷 亨 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10301201)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞増殖因子 / デンドリマー / 構造安定性 / 細胞増殖 / ヒドロゲル / 血管再生 / ナノ材料 / ナノバイオ |
Research Abstract |
本研究では、樹状構造を有するグリセロール(ポリグリセロールデンドリマー: PGD)が生理活性タンパク質の構造安定性に及ぼす寄与を明らかにし、構造安定化された細胞成長因子放出制御が可能な血管再生用マテリアルを創製することを目的としている。 PGDが細胞増殖因子の活性を保持する効果があるかどうかを評価するため、マウス線維芽細胞(NIH/3T3細胞)を培養し、PGDと塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加し、bFGFの活性を細胞増殖数から定量化した。その結果、対照(bFGFなし)に比べてbFGFを添加したもので細胞数が有意に増大し、さらに、PGD添加によって細胞数が増大する傾向にあった。0.1wt%PGDsのみではNIH/3T3細胞生存率は変化しなかったから、このことは、PGD存在下においてbFGFの細胞増殖活性を増強させる効果があることを示唆していた。 PGDのゲル化方法についても検討した。PGDのゲル化方法として、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)を架橋剤として、水酸化ナトリウム水溶液中、60℃、一昼夜反応させ、3次元架橋物を合成し、水で膨潤してヒドロゲルを作製した。PGDとEGDGEの濃度を変更して合成を行った。全てのヒドロゲルは円板状の形態を維持し得る硬度を有していたが、緩衝液中にてbFGFを導入するとヒドロゲルの形態が崩れてしまったため、架橋方法及びその条件については今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、PGD存在下における細胞増殖因子の活性保持効果を確認することが達成でき、当初の予定通りである。また、PGDのゲル化の基礎検討を進めたが、細胞増殖因子を保持、並びにその細胞増殖効果の検証は不十分であるため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ポリグリセロールデンドリマー(PGD)架橋ヒドロゲルの調製法について検討を続ける。成長因子として血管内皮細胞増殖因子(VEGF)もしくは塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を保持可能な架橋ゲルの調製条件を見出し、これら成長因子の熱力学的構造安定性と放出制御を解析する。放出されたVEGFの生理活性については、VEGFに親和性の高いCD309抗原との結合を表面プラズモン共鳴(SPR)法による結合・解離平衡反応の解析から評価する。 PGDによる機能性タンパク質の構造安定性の保持とPGD架橋ゲルによる再現性の高い放出制御技術を確立できたところで、具体的に血管内皮前駆細胞(Endothelial Progenitor Cell:EPC)の分化・増殖に及ぼす、成長因子の構造安定化と放出制御の影響について検討する。VEGFの構造安定性と放出制御機能を明確にできたところで、EPCの培養におけるVEGFの放出制御の影響を評価する。具体的には、EPCの細胞表層マーカーであるCD133抗原、CD34抗原 および CD309 抗原の発現にもとづき、EPCを濃縮後にフローサイトメトリーにかけ、EPC 数のカウントから増殖効率を定量評価する。
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