2011 Fiscal Year Annual Research Report
超安定なポリイオンコンプレックス被覆分解性高分子ミセル型ドラッグキャリヤーの開発
Project/Area Number |
22300172
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
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Keywords | 高分子ミセル / 生分解性高分子 / ドラッグキャリア / ポリ乳酸 / ポリペプチド / ポリイオンコンプレックス / ヒアルロン酸 / ターゲティング |
Research Abstract |
親水性および疎水性セグメントからなる両親媒性高分子は,水中でミセル様の会合体を形成することが知られており,DDS用キャリヤーとして有望視されている。これまでに,生分解性のポリリシン-ポリ乳酸・ABジブロック共重合体(PLys^+-b-PLLA)から調製される正電荷を有するミセルを,ポリイオンコンプレックス(PIC)形成によりビアルロン酸(HA)で被覆すると,安定性の著しい向上やステルス性の付与などが達成されることを見いだした。今年度は,このPIC被覆ミセルに肝実質細胞に対する標的指向性を付与することを目的として,肝実質細胞に特異的に認識される糖鎖であるガラクトースを修飾したヒアルロン酸(Gal-HA)で被覆して,表面にガラクトースを導入した高分子ミセルを調製し,その細胞取り込み等について検討した。動的光散乱(DLS)測定により,PIC被覆することにより粒径が大きくなったこと,ゼータ電位測定により表面電荷が正から負へと変化したこと,臨界ミセル濃度(CMC)測定よりミセルの安定性が著しく向上したことなどからGal-HAによる被覆を確認した。Gal-HA被覆ミセル水溶液にガラクトース認識レクチンであるPNAを添加したところ,凝集に伴う光透過率の低下が見られたことから,ミセル表面にガラクトース残基が存在していることが示唆された。また,共焦点レーザー蛍光顕微鏡(CLSM)観察により,ヒト肝癌細胞HepG2に対するGal-HA被覆ミセルの高い取り込みが観測された。この現象は,阻害剤であるガラクトース等の添加によって阻害されたことからHepG2細胞への取り込みは細胞表面のレセプターを介した特異的なものであることが示唆された。これらの結果より,Gal-HA被覆高分子ミセルは,高い安定性を有する細胞特異的DDS用キャリヤーとしての応用が期待できる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HA-被覆ミセルの肝類洞内皮細胞に対する取り込み,ガラクトース修飾による肝実質細胞への取り込み促進については,予定通り検討を終了しているが,これらのin vivoにおける体内動態についての検討は条件設定がうまくいかず,信頼できる結果を得ていない。また,多重被覆ミセルについては,調製はできているが,酵素に応答した段階的分解を定量的に検出することができておらず,その手法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
各種ミセルのin vivoにおける体内動態解析については,条件設定をほぼ終わりつつあり,研究協力者である九州大学丸山厚先生との共同研究により,測定のめどが立っている。また,多重被覆ミセルについては,各層を異なる蛍光色素でラベル化する手法を確立したので,酵素に応答した段階的分解を定量的に検出することができると考えられる。
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