2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳イルージョンを用いたリハビリテーション療法の神経基盤―療法定着化への基礎研究
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22300187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 章 京都大学, 医学研究科, 教授 (50200043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 潤 京都大学, 医学研究科, 助教 (00452269)
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Keywords | ミラーセラピー / 運動イメージ療法 / リハビリテーション / 脳イルージョン |
Research Abstract |
脳イルージョンの発生とそれに関わる中枢神経系の活動について検索した。 1)脳イルージョンを用いた療法として知られているミラーセラピーの効果の仕組みについて脳磁場計測システムを用いて検索した。その結果、右手を支配する左大脳皮質運動野は左手の鏡像、すなわち右手のように見える左手および実際の右手を見ると興奮するのに対して、左手を支配する右大脳皮質運動野は右手の鏡像、すなわち左手のように見える右手を見ると興奮するが実際の左手を見ると興奮しないことが示された。これらの結果はミラーセラピーにおいて単に反対側の手を見せることだけでは大脳皮質を興奮させることはできないことを示しており、患者が利き手のような高機能の手を持っていると感じることが大脳皮質運動野を興奮させ、身体機能を改善するために重要であることを示唆している。このことは実際のリハビリテーション訓練に役に立つと考えられる。 2)脳イルージョンを用いたもう一つの療法である運動イメージ療法についてのこれまでの研究において、明確な運動イメージを形成するためには、患者が正確な身体図式を持つことが重要であることが示唆された。健常者の身体図式を誤らせる、すなわち身体の外に自身の手があるかのような感覚を生じさせるラバーハンド実験を行った。体性感覚刺激と同期してラバーハンドに視覚刺激が与えられるとラバーハンドが自身の手であるかのような錯覚が生じ、さらにこの錯覚は体性感覚だけでも形成されることが示され、身体図式に関わる特定の脳領域の存在が示唆された。 3)中枢神経系の興奮度を定量するために開発したテレメーターシステムを、自由行動下のラットに適用し、そのニューロン活動を記録した。その結果、自他のラットの行動に依存してその活動を変化させるニューロンが観察された。本システムは広く覚醒状態の動物のニューロン活動を解析するために有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り脳イルージョンを用いた療法として知られるミラーセラピーの大脳皮質運動野興奮作用について検索を進め、その成果を国際誌に発表した。また、運動イメージに関する研究の進展により身体図式の重要性が示唆され、この身体図式形成を担う脳活動を解析するという新たな研究の展開を導いた。覚醒状態の動物脳における中枢神経系の賦活度を計測するシステムの開発は、脳イルージョンに関わる脳活動のニューロンレベルでの解析を可能にするものと期待される。このように研究の進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた脳イルージョンを用いた療法として知られるミラーセラピーや運動イメージ療法の効果の仕組みを脳活動にもとづいて解析する研究は、今後とも脳磁場計測システムを用いてさらに詳細に検索する予定である。また、必要に応じてfMRIを用いた解析も取り入れる計画である。また、中枢神経系の興奮度を定量するために開発したテレメーターシステムを用いて、脳イルージョンに関わる神経機構をニューロンレベルで解析する計画である。
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[Journal Article] Asymmetric activation of the primary motor cortex during observation of a mirror reflection of a hand2011
Author(s)
Tominaga, W., Matsubayash, J., Furuya, M., Matsuhashi, M., Mima, T., Fukuyama, H. and Mitani, A
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Journal Title
PLoS One
Volume: vol. 6
Pages: e28226
DOI
Peer Reviewed
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