2011 Fiscal Year Annual Research Report
ユニバーサル色覚バリアフリー促進のための新しい色視力検査装置の開発
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22300196
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 清 信州大学, 工学部, 教授 (20273071)
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Keywords | ユニバーサルデザイン / 色覚バリアフリー / 色視力検査装置 |
Research Abstract |
平成22年度に開発した色視力検査法の有効性を調べるため、若年者正常眼(矯正視力1.0以上)の色視力の基本的な特性と、その加齢変化について検証を行った。色視力(CVA : Color Vision Acuity)を測定するために、指標のランドルト環には有彩色の色としてMEW COLOR TESTの彩度6の15色を、背景色には無彩色として標準の光D65の白色点(輝度はランドルト環と等輝度)を用いた。背景色と視標の輝度を同じにすることで、有彩色と無彩色の厳密な色の判別能力を検査し、視標としてランドルト環を用いることで、色に対する形態覚を検査可能にした。 臨床検査の結果、CVAは色ごとに異なり、平均値で最も低い値(小数視力が高い)を示したのはGBの0.1423で、逆に最も高い値(小数視力が低い)値を示したのはBPの0.788で、両者の間には0.6457の差があり、色によってCVAに大きな差があることが明らかとなった。 次に、加齢に伴うCVAの変化を調査したところ、すべての年代群でAverage CVA(CVAのすべての検査色に対する平均値)に差が認められ、年齢の増加とともに次第に減少してゆく傾向が認められた。とくに、20代とその他の年齢を比較すると、Average CVAは60代以降から有意に低下し、60代以降急に日常生活の中で違和感を感じる現象と符号する根拠が明らかなった。 これらの結果から、開発した色視力検査システムは,色に対する視機能の加齢変化を明らかにするのに有効であり、さらに様々な症例に対して検査を行うことにより、従来見出すことができなかった知見を得られる可能性が示唆された。また、色視力検査法の装置化とプロトタイプ作成についても検討を行い、医療現場で利用しやすい機能性、操作性に優れたシステムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初からの目的であった、ユニバーサル色覚バリアフリーを促進するための新しい色視力検査法を確立し、それを色視力検査装置としてシステム化するとともに、臨床実験によって従来明らかにされてこなかった色による色視力の違いや、加齢に伴う新しい色視力の変化などに新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、引き続き医療現場における色視力検査装置を用いた臨床実験の機会を増やし、様々な症例と色視力の因果関係を解明してゆく。また、開発した色視力検査システムを、観測者の環境を変更可能な環境可変色視力検査法に発展させる。人間の色知覚は、照明光の明るさや色によって大きな影響を受ける。そこで、明るさの影響や照明光の色の影響等の知見に基づき、まず、観測者の環境を記述するモデルを構築する。このモデルでは、観測者の環境パラメータとして照明光の明度と色度を用い、これらの入力値によって、与えられた色が任意の環境下でどのように知覚されるかを再現できる仕組みを構築する。
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