2011 Fiscal Year Annual Research Report
生活習慣病の早期診断を目的とした新規バイオマーカーの生理的意義解明
Project/Area Number |
22300242
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 康一 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究部門長 (90358333)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤澤 陽子 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 産総研特別研究員 (50549897)
七里 元督 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究員 (20434780)
|
Keywords | バイオマーカー / 生活習慣病 / 脂質 / 糖尿病 |
Research Abstract |
本研究の目標は、ヒト臨床検体によって有用性を検証した脂質由来の酸化ストレスマーカー(特にリノール酸およびコレステロールの生体内酸化によって生じるヒドロキシリノール酸およびヒドロキシコレステロールとその前駆体)の生理的意義を明確にすることである。本年度は主に、疾患モデル動物中の脂質酸化物の解析と抗酸化物質の効果、また培養細胞におけるヒドロキシリノール酸による細胞保護作用について検証した。 (1)パーキンソン病モデル動物における体内脂質酸化と抗酸化物質の効果 薬物投与によるパーキンソン病モデルマウスを用いて、血液中および中枢神経の酸化傷害を抗酸化物質で抑制することで、行動異常を改善することができるかを検討した。疾病モデルマウスの血清中および脳組織(特に中脳・線条体)における、脂質酸化生成物の増加と行動異常を認めた。さらに、本マウスへの薬物投与前からの抗酸化物質の摂餌は、血清中における脂質酸化生成物を抑制し行動異常に対する改善効果を示した。これらの結果より、脂質酸化物の上昇はモデルマウスにおける行動異常の一因になっていることが示唆された。しかし、薬物投与による脳内神経伝達物質の変化に対して、抗酸化物質による改善効果は認められなかった。 (2)ヒドロキシリノール酸の細胞応答メカニズム解明 培養細胞(主に上皮角化細胞HaCat)を用いて、各脂質酸化物の細胞毒性と酸化剤による細胞死に対する細胞保護効果を検討した。HaCaT細胞に前処理した4種類のヒドロキシリノール酸の異性体の内、2種において細胞保護作用を認めた。細胞保護作用を示したヒドロキシリノール酸は細胞内の抗酸化タンパク質の誘導を示し、細胞保護作用への関与が示唆された。今後、これらの結果をもとに、細胞死を示さない低濃度での適応応答とその詳細なメカニズムの解析を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標であった適応応答に関して、目標であった9、13-HODEのみでなく、新たなマーカーとして10、12-ヒドロキシリノール酸に関しても、紫外線ストレスにおける適応応答を皮膚細胞で見出した。このように細胞レベルでは当初計画以上の成果が得られつつあるものの、動物実験に関しては大きな成果が得られず、本テーマ全体としてはおおむね順調と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記実験で得られた結果をもとに、個体レベルでの生理的意義解明を行う。ヒト臨床検体で酸化ストレスマーカの上昇が認められている糖尿病や動脈硬化症に焦点をしぼり、これら疾患モデルマウスにおける応答を解析する。加えて糖負荷試験も実施してマーカー信頼性を確認する。 (1)疾患モデルマウスにおけるヒドロキシリノール酸およびヒドロキシコレステロールの変動を詳細に解析する。 (2)健常者における糖負荷試験を実施し、早期診断に有効であるマーカーとしてその信頼性をより高める。 個体の応答に関しては、血液、組織の分析をLC-MS/MSやPCR、GC-MSなどの機器分析によって精査する。
|