2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物が着生した炭酸カルシウム系材料の劣化特性とその診断手法の開発
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22300305
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60306074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (10325938)
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Keywords | 炭酸カルシウム / 着生生物 / 地衣類 / 漆喰 |
Research Abstract |
生物の着生過程をモニタリングするために江戸時代の製作技法で作成した漆喰サンプルを用いた暴露およを開始した。これら漆喰サンプルには保存科学分野で使用実績がありそれぞれ特性の異なる強化剤を含浸塗布し、漆喰表面の形状やそれぞれの薬剤の耐候性、着生生物のサンプルへの着生過程の違いを見出すことを目的としている。これらの漆喰サンプルは国内(千葉県)と国外(カンボジア)に設置し、国外では着生生物の繁茂が遺産の劣化の大きな要因となっているアンコール遺跡群バイヨン寺院にて行った。またカンボジアでは着生生物の採取を行い、現在DNA解析を行っている。採取した黒色微生物をDNA解析した結果、地衣類の一種であるEndcarpon属との結果が出たが、今後形態・化学成分データと統合し精査する必要がある。 導入した高倍率デジタルマイクロスコープ、SEM、PAS染色によって漆喰に着生する生物との境界部における微細構造の観察を行った結果、漆喰における着生生物の穿入は地衣類や藻類では約0.2mm程度、蘇苔類に至っては穿入深さが6mmを超えることが明らかとなった。PAS染色観察では、漆喰表層0.2~0.3mmの地衣類の穿入密度が高い部分では、その染色の様相から漆喰の状態が変化している可能性が示唆された。バイオミネラルであるシュウ酸カルシウムを生成する地衣類が着生した漆喰の元素分布をSEM-EDXを用いて分析した結果、漆喰の深部から表層に進むにしたがってカルシウム元素の信号強度が減少した。これは風化によるものであるか、バイオミネラリゼーションによるものであるか検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災による影響によりダメージを受けた研究施設および実験設備の復旧、修復に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
着生生物のDNA解析を進め、環境因子や化学成分分析結果と併せて検討を進める。また暴露試験においては経過観察を行ない、着生過程を明らかにする。同時に強化剤を塗布したサンプルへの着生の違いに着目し観察、調査研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)