2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300324
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 正光 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20291396)
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Keywords | シグナル伝達 / リン酸化 / 播種 / 集団移動 / 細胞接触阻止 / 神経膠芽腫 |
Research Abstract |
本申請は、細胞分散型の代表的腫瘍の播種と、細胞集団移動による高分化型癌の転移という二つの進展様式に関る分子・シグナル経路を同定し、治療応用を目指すものである。細胞分散型(播種型)の腫瘍浸潤の解析として、H22年度に神経膠芽腫の担癌動物からチロシンリン酸化蛋白質を質量分析により同定した。H23年度はその中から腫瘍細胞における機能が明らかでなかったSKAP2の解析を進めた。SKAP2は細胞膜の先端部に局在しており、細胞移動の促進作用を当初予想したが解析の結果、WAVE2/Cortactinと結合能を有し、神経膠芽腫や線維芽細胞では両者の協調によるアクチン重合を抑制する機能を明らかにした。一方でリンパ球などの細胞ではSKAP2はADAPと相互作用する事でアクチン骨格の形成促進作用がみられ、細胞種によりアクチン重合と細胞移動において二面性を有する事が考慮された。神経膠芽腫においては、その浸潤抑制効果が期待され解析を進めている。一方で、神経膠芽腫のグリアへの浸潤様式を規定する現象として、細胞移動の接触阻止(CIL)に転移抑制遺伝子であるNm23-H1を介したRacの活性化制御機構が重要であること、またephrinがそれを阻害する作用を有する事を解明した。 癌の細胞集団移動に関しては、発生組織との類似性からアプローチし、神経堤細胞の細胞集団移動に関る事が知られているPCP経路に属する分子群から、LPPの機能解析を進めた。RNA干渉による発現量の操作により、LPPは肺癌やメラノーマ細胞において細胞間接着を大きく変化させ、それはN・カドヘリンの分解制御を介する事を明らかにした。同癌細胞の血行性転移に大きく関ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
担癌動物モデル・細胞株の作製などからスタートし、腫瘍の播種あるいは集団移動に関る3つのアプローチから候補分子の機能解析を進められている。それぞれ現時点で論文投稿中または作製段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
候補分子の機能解析結果を踏まえ、マウス個体での腫瘍の播種・血行転移に対する評価・臨床病理検体の検索を加え、腫瘍抑制に対する位置づけをおこなう。当初計画の動物を用いた転移のイメージングは、現有機器の解像度の問題や哺乳類以外のモデルを用いた場合の種特有の差違があった事から、腹膜播種のイメージングへの有用性に焦点を絞ったトランスジェニックマウスの作製に修正して進めている。
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Research Products
(7 results)