2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞接着分子群の解析に基づく、がんの個性診断法の開発
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22300336
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 善則 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30182108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80273647)
桜井 美佳 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80508359)
後藤 明輝 秋田大学, 医学部, 教授 (90317090)
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Keywords | 細胞接着分子 / CADM1 / 肺がん / 腎細胞がん / 乳がん / ATL / 分子標的薬 / 増殖因子受容体 |
Research Abstract |
細胞接着分子群の解析に基づくがんの個性診断法の開発を目指した研究を行い、以下の結果を得た。 1.肺がん、大腸がんにおけるCADM1と増殖因子受容体とのクロストーク:非小細胞肺がん細胞ではCADM1とMETが共沈し、HGFによるHGF-METシグナルの活性化をCADM1が抑制することを実験的に示した。さらに、非小細胞肺がん組織でCADM1の発現とMETのリン酸化とが相反する傾向にあることを見出した。そこで、培養細胞を用いて、ゲフィティニブによる耐性獲得機構にCADM1が関わる可能性を検討し、MET増幅による耐性獲得にCADMの発現欠如が相関する可能性を示した。 2.膀胱がん、乳がんにおける細胞接着分子CADM1の異常と、その意義の解析:手術摘出膀胱がん147例、乳がん67例の免疫組織染色の解析から、それぞれ約63%、70%でCADM1の発現欠如、タンパク質の膜局在の異常を認めた。これらの異常は臨床病期の進行に伴って認められ、膀胱がんでは独立した予後予測因子となることを示した。また、大腸がんでは、CADM1が細胞膜の脂質ラフト内でCsk-bindingprotein(CBP)、SRCと複合体を形成し、SRCによる活性化を抑制する可能性を見出した。 3.CADM1を標的とするATL、小細胞肺がん(SCLC)の診断、治療法の開発の基礎研究:CADM1がSCLCではバリアント8/9というスプライス・バリアントを特異的に発現することを示した。さらに、培養上清にはCADM1細胞外断片が検出されることを示した。そこで、SCLCの特異的診断を目指して抗体を用いたサンドイッチ法による血清でのCADM1検出法の悪率を目指している。また、上皮細胞で発現するCADM1バリアントが6か所のN型糖鎖修飾をうけ、またO-型糖鎖にはシアルさんが修飾することを共同研究により示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CADM1と細胞増殖因子受容体のクロストークの研究では、CADM1はMETと複合体を形成してそのシグナル経路を抑制することを見出し、これに基づいて、非小細胞肺がんのゲフィティニブによる耐性獲得機構にCADM1の発現の有無が関わることを見出した。これは、非小細胞肺がんの分子標的療法の治療選択に関わる新しい質的診断に発展する可能性を示すもので、予想を上回る成果である。また、小細胞肺癌の診断にCADM1の奥井的スプライシング・バリアントが有効である可能性を示し、血清診断の基礎が固められたことも、予想を上回る成果である。以上により、当初の計画が予想以上に伸展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
CADM1と細胞増殖因子受容体のクロストークの研究については、ゲフィティニブ感受性非小細胞肺がんにおけるCADM1の発現の有無が、METの遺伝子増幅、過剰発現を介したゲフィティニブ耐性獲得に関わる可能性が強く示唆されることから、他施設との共同で、ゲフィティニブ治療前後、耐性獲得後の一連の非小細胞肺がん手術例を用いた解析へと発展させている。一方、小細胞肺癌の診断に関する研究では、CADM1の細胞外断片が患者血清に検出できる結果を予備的に得ていることから、企業と共同でサンドイット法を改良し、感度、特異度の高い検出系の確立を目指す。
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Research Products
(17 results)